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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈十一〉

   2016年3月10日  

 ねぇ。この世界を壊してしまわないかい?

 

 
 翌日、俺は腹を満たすために。駅の近くのコンビニへ来ていた。なぜ駅の近くかというと、店内に人が多い為、万引きをしてもバレにくい。そして一度行ったコンビニへはしばらく行かないようにしている。顔を覚えられないようにだ。
 ジャムパン……イチゴのジャムパン。パンコーナーを手早く捜索するものの、いつものジャムパンは売り切れだったようだ。しかし長居は出来ない。すぐ近くにあった紙パックのジュースを手に取り、周囲、カメラに注意しつつ何気なくポケットへと滑り込ませ店を出た。
 もう他のコンビニは行き尽くしている。空腹の腹が愚痴をたれている。仕方なく一度家に帰ることにした。
 気が付かなかったが、季節はもう秋に変わろうとしていた。湿った空気に混じって、何故か物悲しい映画を観た後の溜息のような、全ての季節の終わりを知っているような、そんな空気を感じた。そんな風が突然、ブワァーッとビルとビルの隙間を駆け抜けた。風に当てられた俺は目を細めて空を仰いだ。なんだろう。何か新しい出来事が起こる様な気がして、心が踊った。
 踊る心に身を任せ、身体が風の様に軽くなる。今の俺なら何だって出来てしまう。それこそこのくだらない世界を滅ぼしてしまおう。そして俺がこの世界を統べようじゃないか……なんて俺の幸せな妄想を一気にかき消した奴がいる。
「ご機嫌だねぇ。いい事でもあったのかな? 勝手にお邪魔させてもらってるよぉ~」
 白衣の男が勝手に俺の家で涅槃像の形で寝そべり、くつろいでいた。
 清々しい気持ちから一転、ジワジワと憎悪の念が込み上げてくる。
「おい! お前はいったいなんなんだよ! 勝手に上がり込んで、ムカつくんだよ! ヘラヘラしやがって! そもそも、キネマじゃねんだよ。古ぃーんだよ。シネマ館なんだよ」
 イライラした俺は白衣の男を家から引きずりだそうとした時だった。男は白いコンビニ袋を俺に差し出し、細い目をもっと細くして言った。
「人ん家に行く時は、ほらっ。お・み・や・げ!」
 無理やり渡されたコンビニ袋の中には、イチゴのジャムパンが三個、小さめの牛乳パック。立派な朝ごはんだ。ただ急に渡されて、どうすれば良いのか? なんて考える暇もなく、不機嫌な腹が俺に催促した。
 大好きなジャムパンを頬張っている俺の姿を、見守る父の様な、それとも毒を入れておいたため、のたうち回る姿を想像しているのか。わからないが、ニッコリと微笑みながら食い終えるのをただ黙って見つめていた。
 パンを食い終え、残りの牛乳を一息で飲み込み干し、アァ~っと満足げに見せてみた。その様子を男はまだ黙って見つめている。そして突然、突拍子もない事を言い出した。

 

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