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ラブストーリー

栄光の最先端薬学部 第1話

   

 真鍋登四郎は日本正院薬科大学薬学部3年である。
 佐藤純男教授の元で勉学に勤しみ、臨床テスト(治験)を繰り返し大人になって行く。人生とは何か?恋人とはどうあるべきか?友情とはどうあるべきか?簡単ではない!
 真鍋のおもしろ、おかしいキャンパスライフを独特の観点から綴ります。
 臨床テスト(治験)専門の派遣である白鳥 麗ことチャウチャウとの出会いからスタートです。

 

 
 窓から温かい太陽の陽射しが、ベッドの上に満遍なく広がっていた。イヤ? 温かいとは表現が間違っている。正確にはこの場合『暑い』いや『熱い』が適切な表現だろう。その熱い陽射しが、薄いタオルケットを容赦なく貫通し、真夏のビーチの如く、肌に直接ジリジリと突き刺している様だった。汗が身体中を覆って粘着いているうえに、シーツやタオルケットが汗を弾いている様な不快感に、とても我慢出来ずに飛び起きた。トランクス一枚の格好で、ベッド脇に座り、壁の時計を恨めしそうに眺めると、午前10時を少し回った所だった。ムッとする様な部屋の空気にうんざりして立ち上がり、部屋にひとつしか無い窓を開けた。窓からは午前中だと言うのに、部屋の中の空気よりも更に熱の籠った湿度ある風が、団体旅行客のようにダラダラと部屋へなだれ込んだ。そのまま、ヨタヨタと玄関に向かい、入口ドアを全開にして、閉じないようにドア下の隙間にスニーカーを挟み込んだ。すると生温かいムッとする部屋の空気が、窓から入る温かい風に押されて、玄関から立ち去っていく。生温かいが、部屋の中をすり抜けて行く風が心地良かった。湧き上がる欠伸と共に、両手を天井に突き上げて伸びをすると、急に腹が空いてきた。

 昨晩、家に帰ったのは何時頃だったか? 思い出そうとしても、なかなか記憶が蘇って来ない。記憶力は悪い事は無い。1週間前の晩に何を食べたかも思い出せる自信がある。それなのに、何時に帰ったか? 待てよ? どうやって帰って来た? そう言えば、俺はどうしてトランクス1枚で寝てたんだ? 酒でも飲んだんだったか? 急に不安になって来た。こんな事は初めてだった。落ち着け。もっと前、覚えてる所から追っかけよう。…昨日はオニジュンに付き合って、臨床実験のデータを30種類以上も作ってきた。オニジュンとは、僕が通っている日本正院薬科大学薬学部教授の佐藤純男である。純男と書いて『すみお』と呼ぶが、皆は『鬼の純男』を略して『オニジュン』と呼んでいる。オニスミでは無くオニジュンなのが分からない。周りの仲間達は、佐藤教授の狂気的な研究に掛ける情熱に着いて行けず、特に臨床実験のデータ取りなど時間の掛かる事は、何故か助教授の坂田勝也と僕が残ってやる事が殆どだ。僕はこの大学の3年生で、真鍋登四郎と言う。いや、そんな事はどうでもいい。
 臨床データを纏めてオニジュンへ提出した。そうだ。確か提出したのが、助教授の坂田より少し早かった。そうだ。夜の9時を少し回った位だった。…提出した時、教授の部屋に見慣れない数人の者が居た。同じ学生だったか?何人? …え~っとぉ~? 4人だ。男が2人と女が2人だ。でも、見慣れない奴らだ。初めて会った気がする。頭の中でモヤモヤした液状の記憶を、固体化したブロック状に変換して積み上げる。僕の記憶再生のやり方である。僕の臨床データをオニジュンが受け取った。表情ひとつ変えずにデータに目を通すと、スチールフレームの眼鏡を鼻先に下げて、僕に何か言った。何を言った? …思い出せない。

 

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