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星座アラベスク<2>おうし座(下)

   

 おうし座のラッキー・カラーはベージュ、ダーク・ブルー。
 おうし座を支配するのは金星で、交友を表している。

 

 薬師寺正次の人生は不幸の連続であった。
 ちょうど中学を卒業したときに、家が倒産した。
 出稼ぎに出た父親は、そのまま帰らなかった。
 女が出来たのである。
 それを知った母親は、薬師寺正次を棄てて、男の元へ奔った。
 母親がいなくなることを直感的に悟った薬師寺正次は、駅に駆けつけた。
 母親の乗る車両を見つけ、窓ガラスを叩いたが、母親は目を逸らせたのであった。
 薬師寺正次は施設に引き取られた。
 そこで身につけた簿記の知識が、唯一の生活の糧となった。
 小さな会社を転々として経理の仕事を続けた。
 もののはずみで、ある出戻りの女と結婚することになった。
 その結婚は、女と、女の十才の子供、それに借金を背負うことであった。
 すぐに、もののはずみではないことが分かった。
 やがて、自分の子供も出来たのだが、死産であった。
 なんの取り柄もない女と、不良の子供、それに、増え続ける借金、この三つに取り囲まれた生活が、救い無く続いていた。
 薬師寺正次が四十才のとき、子供が死んだ。
 コンビニへ強盗に入り、逃げ出した所で、車に轢かれたのである。
 それから十年目、愚痴を言い続けた妻が、癌で死んだ。
 後に残ったのは、妻が残した、想像以上の借金である。
「一体、俺の人生は何なのだろう……」
 五十才になったとき、会社の空気を感じた。
 リストラされようとしているのだ。
「……」
 一縷の望みも失った薬師寺正次は、有名なパルミラ・クレオパトラのウイークエンド相談へ手紙を出した。
 せめてもの救いを求めたのである。
 やがて――、予約の日時を知らせる手紙が届いた。
 ウイークエンド相談には、毎月、何万通という手紙が来るということだ。
 相談に乗って貰えるだけでも、宝くじに当選するに等しい。
 大喜びをした。
 薬師寺正次の人生で、これほど喜んだことは、過去にはなかった。
 駅を降り、クリスマスの飾り付けで昼のように明るい道を進む。

 

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