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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season9-7

   

御影はワゴン車に乗せられ、連れ去られてしまった。気絶した振りをして相手の気配を感じていた。

 到着したワゴン車から降ろされ、“俺様”、という声をきいた。ついに首謀者とのご対面だ。

 森谷を爆死させた張本人のお出まし。御影は反発の目で見ている。

 勝ち気な態度は蓮沼の癇に障る。しかし御影は丸裸で囮などしない。仲間もそうさせるわけがない。

 シール型の発信器、盗聴器などを身に着けて特殊マイクで命令を直接聴いていた。御影の行動、相手との会話は逐一、氷室探偵たちが把握していた。

 羽田近くまできて、森谷と同じようにワゴン車に拘束された御影。爆破するつもりだ。

 絶体絶命のピンチ。こういうときにヒーローは現れる。そのとおりに氷室たちが現れた。

 蓮沼は工作員が尾行されていたことに気づかなかったのかとにらむが、氷室たちは視界にワゴン車が入らないようにずっと後方から追跡していた。

 追い込まれた蓮沼は笑っていた。どのみち探偵は一掃しようとしていた蓮沼。まとめて抹殺できることに喜悦しているのだ。

 まだ優勢でない氷室たち。蓮沼が爆弾の遠隔用の携帯電話を持っている以上、有利であるのに変わりない。

 全面対決。

 

 御影を乗せたワゴン車が停まった。意識を失っている振りをしているが、体感的にわかったことがある。30分ほどかかったと思う。そして、右折や左折などのハンドルの切り替えしを感じない。

 つまり高速道路を経由して目的地にたどり着いたと推測した。

「降ろせ」前方の男がおそらくいった。御影は服を掴まれて引きずられるようにワゴン車から降ろされた。

「いつまで気絶した振りをしている」さっきとは別の男の声がした。

 御影はゆっくりとまぶたを開けた。「バレてたってわけね」上体を起こす御影。

「ああ、よくきたな。俺様がだれかわかるか?」男はきいてきた。

“俺様”、御影はやっとご対面となった。「蓮沼 煉児か」

「おいおい、若造、年上にむかって名前を呼び捨てにするな“さま”をつけろ、コラ」蓮沼はニタニタと笑っていた。

「犯罪をたのしんでいる異常者に敬称をつけるはずはないだろ」御影は動じない。

「ほう、この状況で反発するか」蓮沼はいった。

 御影を囲うように蓮沼の配下が五人いた。運転手と助手席、御影の後部座席にやはりいた。そしてこの場で待ち合わせていた蓮沼と周囲を監視する部下がひとりいたとみえる。

「六人か、あんたたち?」御影は少しでも状況を声にだしてつたえる。盗聴器で聞いている氷室たちに。

「そうだ、それがどうした?」蓮沼はにらんだ。

「いや、たいそうな組織にいながらも、従うのはこれっぽっちの人数かと思ってな。小山の大将、ボス猿気取りか?」御影はあえてあおった。

 蓮沼は御影に近寄る。そして、蹴り飛ばす。

 御影はその強烈な蹴りを腹部に喰らい、後方に倒れた。痛みに苦しみ、横たわったまま呼吸が荒くなった。

「どうだ、その苦痛は俺様の強さだ」見下す若輩者を罵っている。「いいか、おまえの仲間だった探偵のおっさんも爆死したが、同じように処刑してやる。この場所でな」

「ここはどこだ?」御影はたずねるが、特に知る必要もなかった。シール型の発信器で追跡はされている。すでに氷室や探偵仲間がきているはずだ。

「羽田の近くだ。ここで爆死させる」蓮沼はいった。「ゲームをしよう。猶予を与える。時間は一時間ほどだ。助かるかどうかはわからんがな。期待はないだろう。きさまら探偵がここにたどり着くことはない。お別れがいえずにかわいそうだな」

 工作員たちが御影の上体を起こし、手首を後ろ手にしてロープで縛った。そのままワゴン車の助手席に乗せた。逃げれないように助手席のシートベルトで体を固定させ、さらにロープで縛りつけた。手首が自由にまだ動くため、そこからハンドルに両手を伸ばし身動きができないように縛りつけた。

「ここまでするか」御影は奥歯を噛みしめていた。

「情けなどない。殲滅させる」笑いながら目を見開く蓮沼の顔は悪意そのものだった。

 御影はその表情から、たしかな核心をえた。プライベート・アイ。探偵の目で蓮沼の抱えている胸中を察した。

「爆弾をとりつけろ」蓮沼がそういったとき、その場に現れた一台の車。

 氷室、火守、雲田が現れた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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