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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈十七〉

   2016年3月28日  

 動くな……動けばこの喉掻っ切るぞ……

 

「まぁ、眇寨は完璧に治ったわけじゃねぇ。だから、これからはみんなも眇寨をサポートしてやってくれ。しかし今日はある意味記念すべき日だ。茶なんてやめて酒で盛り上がってもいいんじゃねーか?」
 平山が立ち上がって皆にそう告げた。僕の中での平山という人間が百八十度違って見えた。この人はやっぱり心の優しい人なんだと。
「おおぉ。そうだな! 酒だ。酒にしよう!」
 宮守は待ってましたとばかりに立ち上がり厨房室へと駆け出した。
「おかえり眇寨君。皆、眇寨君の味方なんだ。辛い事も楽しい事も分かち合えるんだよ。本当に良かったよ、でも少し太った?」
 緋多が背後から声をかけて来た。そうか、緋多と会うのは四ヶ月振りなんだ。緋多は相変わらずの様子だったが、今の僕は変わった。髪も伸び、後ろでしばっていると余計に顔が丸く見えるのだろう。言い訳をしようと口を開いた時に、平山が割って入ってきた。
「顔や体のことは言わんでやってくれ、薬の副作用で太っちまうんだ。食生活は関係ない。眇寨、お前も妙に体のことを気にしなくていい。お前は太ってちょうどイイくらいだぜ」
 そう僕をかばってくれた。何故もっと早くに平山を頼らなかったのだろう。今ならそう思える。この人は知っている。悲しみや辛さ。憎しみや恨めしさ。楽しいことも、投げ出したくなる様なことも、乗り越えてきた人なんだ。
 台車にいろんな酒を山の様に積み上げ、子供の様な満面の笑みを浮かべて宮守が走ってきた。そんな様子も、平山はニヤニヤと見守っていた。そんな背中が、とても広く大きく見えた。本当はガリガリのメガネだが……。
 皆が宮守の周りに集まり各々酒を手に取った。平山は僕の背中をポンっと押した。「ほらお前も行ってこい」という意味だろう。ゆっくりと頷いた。
 鏡が手招きしている。行ってこよう。

「皆、今日は記念すべき日だ。俺たちの大切な仲間が元気な姿を見せてくれた。自分との戦いという戦場から見事生還した眇寨が、我々の為に再び力を貸してくれよう。そして我々も眇寨をサポートして行こうじゃないか。Project E……それはとてつもない悪の権化だ。それに打ち勝つ為にも、これから一心同体となって勝利を収めよう! 乾杯!」

 

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