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ラブストーリー

サクラサク

   

春は別れの季節とはいえ、綺麗な桜も見ごろ
バレンタインで撃沈した恋を諦めきれず、卒業するこの日が最終決戦だと意気込む
相手は学校いちのモテ男
果たしてその恋は散るのか咲くのか…

 

 
 決められた髪色、決められた髪の長さ、決められたものはスカートの丈だったり靴下だったり。
 それでもアタシはそういうものだと受け入れることができた。
 それ以上に楽しめることがあると、知っていたから。
 そして今日も、今日という日もその気持ちが変わることはない。
 いつもと変わらない通学路を、アタシはかかとの減った履き慣れた靴を引き摺りながら歩く。
 かかとを引き摺って歩くのはアタシの癖で、そのせいもあって靴の浪費がバカにならない。
 学校で決められた靴を履くのも今日で最後、最後にしたいことがもうひとつあって、アタシは辺りを見回した。
 諦めが悪いって思われてもいい。
 だって、もうこれが最後かもしれないから。
 どうせなら諦めるくらいハッキリきっちりと玉砕してしまいたい。
 アタシは改めてそう決意をして、目を凝らし辺りを見回したのだけれど、やっぱり見つけられなかった。

「おや~? ゆみちゃんは誰を捜しているのかな?」
 校門を潜るかどうかの瀬戸際で背後から声をかけられ振り返ると、そこには腐れ縁のちかちゃんがいた。
 興味深そうにアタシの顔を覗き込む。
 理由を知っていて敢えてしているのだとアタシにはわかる。
 思い立ったら即行動するちかちゃんに見つかってしまったことを、アタシは後悔した。
 だって……諦め悪いその根源を知っている唯一の人物だから。
 それでもアタシは足掻く、だって諦めが悪いから。
「な、なによ。別にいいじゃない」
「別に~悪いなんて言ってないよ? ただね、誰を捜しているのかなって。知ってたら教えてあげたいじゃない? わたしたちは腐れ縁なわけだし?」
 ま、まあね。
 腐れ縁だもんね、困っているのかなって思えば声をかけてしまう。
 たとえそれが、大きなお世話であってね。
「ありがとう、ちかちゃん。でも、いいの」
「本当に?」
「え? うん……」
 嫌だな、この歯切れの悪い言われ方。
 アタシもきょどった行動しはじめているし。
 すると、さらに興味深そうにアタシを観察していたちかちゃんが、ここぞとばかりに確信に迫った発言をしてきた。

「ふ~ん、なんとなくわかっちゃった。ゆみちゃんの捜し人なら、ここに来るまでの道々で足止めくらっていたわよ。モテるもんね、あいつ。でしょ?」

 ほら、やっぱり。
 アタシは違うよ、別にあいつを捜していたわけじゃないしって言い返したけど、声裏返ってその通りですと言っているようなもの。
 今日が最後なのに、ついてないな……ガックリとしたアタシの心境なんてお構いなし、ちかちゃんに引っ張られ校門を潜り、そのまま体育館へ直行してしまう。
 体育館入り口では下級生が『卒業おめでとう』と書かれたリボンを卒業生に手渡ししていて、その流れでアタシもつい受け取ってしまった。
 体育館の中に入ったら式が終わるまで出られないし、終わったらそのままサヨナラだし。
 やっぱり悪あがきするもんじゃないって、神様のお告げかな。
 とかいっちゃっているけど、別に宗教にハマっているわけでも、崇拝している宗派があるわけでもない。

 

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