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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season9-8 END

   

 警察や、川上たちが遅れて助けにきた。氷室たちもはじめてみるヴィンセントと名乗る男に疑惑の目をむける。
 すると、その正体を明かすヴィンセント。まさかの人物だった。

 追い込まれてしまった蓮沼。ついに最後の手段。爆弾の起動スイッチでもある携帯電話をみせびらかせた。

 ワゴン車にとりつけて御影を爆死させるつもりだったようだが、御影は解放されて自由に動ける。

 だが、その威力は森谷のときと同じかそれいじょう。この場にいる人間は悲惨な結末をむかえることになる。

 これまで手掛けていた神保組の収入源を断つという結果を招いた氷室探偵社の探偵の活躍を逆恨み、森谷から爆死させてみせたが、探偵のしぶとさや個人の能力が誤算を生む。
 勝因は、悪は絶対に勝てないということだ。悪は栄えず、滅びしか生まない。

 相討ちになってもかまわないと蓮沼はその場で携帯電話のキーボタンを押そうとする。すでに追い込まれて正気ではない。
 御影は、押せといった。

 蓮沼は、狂気の笑みのまま、押した。

 ついにクライマックス。

「第九シリーズ完結」

 

 刑事が動いた。

「動くな!」携帯電話を取り出した蓮沼だった。「これはわかるな、遠隔でスイッチを入れることのできる爆弾だ」

 キーボタンを押す蓮沼。そして、画面に電話番号が表示された。

「この番号に発信したら受ける側の携帯電話の着信音の音で起爆する。この場にいる全員を巻き込んで爆死しようじゃないか。派手にな」あざ笑う蓮沼だった。

「やめろ!」田岡警部が叫んだ。

 御影の背後のワゴン車が爆発する予定だった。御影は後ろをむいた。

「おっと、動くなよ。そのワゴン車には爆弾がしかけてある。若き探偵、いちばん酷い状態の遺体になりそうだな。そこのお嬢さんもな」蓮沼はいった。

 助けた大地にむけていっていた。

「死を選ぶことが正しいことではない。逃げることだ。逃げる方法はいくらでもある。それがおまえが裏でやってきたことのすべてだ。逃げる方法しかおまえは他者に教えることはできない」森谷がいった。

「どういう意味だ?」蓮沼は反発した。

「弱い心を救うつもりでいっていたのだろうけど、そうではない。麻薬はひとの心の弱さを増長させるだけだ。そんな特効薬はない。心が弱くなっても周囲の言葉や思いやりがそのひとに力を与える。そのひとのために手を差し伸ばす。それが救いだ」森谷は諭すように蓮沼に問いかけた。

 蓮沼のような邪心にまみれた人間には聞く耳はない。「ざれごとぬかすな老いぼれが!」

「そこまで老けてないぞ」川上がぼやいた。

「うるさい!」蓮沼は携帯電話の画面を川上にむけた。まるで脅すように。「俺様をここまで追い込んだことは褒めてやるよ。探偵、そして無能だと思っていた警察もな。だがな、最後は花となって散る。そう決めていた。ここで弾けて死んでも本望だ。名高い探偵の氷室、あんたを巻き添えにできるならな。だれもこの事実を証言することはできない。そうすれば神保組は不滅だ。俺様の後継者がきっと拡散するはずだ。俺様はだれにも負けてはいない」

 蓮沼は大笑いをしていた。

 黙ってその狂気じみた人間に引けを感じていた。

「ひとを狂わす麻薬をどうして世間に出回る悪行を繰り返すんだ?」御影は問い詰める。

「悪行だと? ちがう、暴力団や犯罪グループはどうやって収入を得るかわかるか? 簡単に収益を得るためには麻薬売買や臓器移植など、裏の仕事でなければ食っていけないからだよ。生活するために仕事をする。俺様がいる世界はそういう仕事しかない。だったらもっとド派手に悪にまみれた人間になろうではないか。それで他者は恐れてひれ伏す。それが心地いいからだ」蓮沼は血走った目で見渡しながら恫喝する。

 探偵たちは黙ってきいていた。最後の負け犬の遠吠えとして。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season9 <全8話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話

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