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SF・ファンタジー・ホラー

水ニ映ルモノ(上)

   

 ネットで話題になっている「幽霊が見える池」。それを修学旅行に向かう新幹線の窓から、ただ一人だけ見てしまったカンナ。宿泊先のホテルに着いても、その霊の顔は追いかけてきた。水面を見るたびぼうっと浮かび上がる顔に、彼女は気も狂わんばかりに怯えた。
 そんな彼女を救おうとしたのは、カンナが憧れる新任教師・時祭だった。「僕の友人に、力になってくれそうな奴がいるんだ」。時祭が語ったその友人とは……。

 女子中学生と若い男性教師が奏でる、恐怖体験の中に芽生えた淡い恋心の物語。

 

「おい、どうするよ。もうすぐだぜ!」
「うわっ、山が見えてきた。あの麓にあるんだろ?」

 通路を挟んだ向こうの席で、男子がやたらと騒ぎ始めた。

 読んでいたライト・ノベルの文庫本から顔を上げ、香月カンナは彼らをいぶかしげに見つめた。

 隣の席では、親友の亜弥奈が、耳にヘッドフォンを挿したまま、スースーと寝息をかいている。
 彼女だけじゃない。早起きしたのと、出発時の興奮が納まったせいで、クラスの大半は眠りこけていた。
 もっとも、修学旅行中の新幹線の車内なんて、読書か音楽を聴くか眠るくらいしかすることはないのだけれど。

 カンナは周りを見回した。この車両はM中学校の生徒の貸切だ。
 職員同士の打ち合わせか、それともトイレか、担任の森先生の姿はない。

 ちょっとほっとした。ヒステリックなおばさん、と皆が言ってる森先生が、カンナは苦手なのだ。

(あれ? 時祭先生もいない……?)
 副担任までいないようだ。彼女はちょっとがっかりした。

 今年新卒でうちの学校に赴任した時祭先生は、まだ学生っぽさが抜けない、男の子っていう感じの先生だ。
 クラスの大半の女子同様、カンナもその新任教師にほのかな恋心を抱いていた。だってかっこいいんだもん。
 きゃっ。
 端正な横顔を思い浮かべ、カンナは一人で真っ赤になった。

 

-SF・ファンタジー・ホラー

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