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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈二十〉

   2016年4月5日  

 大丈夫だ。死んではいない。でもどうしてだ。何で同じもの食ったお前が普通で居るんだ? 何かおかしいぞ

 

 
「そうだな、眇寨。クローンだ。そんな技術は一端の研究者なら先ず通る道だ。そんなに難しくない技術なんだぜ。遺伝子操作しておりません、なんて書いてあるトウモロコシを見たことがあるだろう。人間は、宇宙からきた穀物、トウモロコシに着目し色々と改良を続けて来た。それから羊のドリーなんていい例だなぁ。これから常識なんて廊下のマットをひっくり返すくらい簡単に変わってしまうもんなんだぜ。体外受精が当たり前になり、親が子供を選ぶ時代がくるんだぁ。何というか、あり得ない話ではない。だから俺はお前を信じる。そのクローン達が鏡のクローンなのかもしれねぇ。しかし、なぜ鏡なのか。それに関しては何か解るか?」
 平山は僕を信じてくれた。その喜びに浸る間もなく、何故なのかを考えた。なぜ鏡なのか……
「あっ。関係ないかもしれないけど、良く鏡と一緒にいる時に昔を思い出して、くらっとくる時があるんです。昔何処かで会ったことがあるのかなって、最近特に思います。これも何か役に立てれば良いんですけど……あと四ヶ月前のシステムを書きかえられた事件。あの時誰かが鏡に変装して侵入したわけではなく、そのクローンなんだったんだと思います。そしてあの時に何かしらの情報を盗んだはずなんです。まさか盗聴はないと思いますが……」
 平山はうつ向きながら何か頭の中を整理している様だった。僕の記憶の倉庫に眠っている鏡との出来事。そういえば、初めて北山公園で会った時も同じ様な感覚がした。
「やっぱ分からねぇな。クローンの事を皆に話すのは少し待ってくれ。いずれ俺が皆に説明してやるよ。だからお前は親友に会えなかった事だけを伝えろ。大丈夫だ、俺に任しとけ」
 僕も平山を信じている。他の皆の事を信じていない訳ではない。信頼しているのだ。
 鏡が心配しているだろう。話してこよう。

「皆、すみません。心配かけちゃって。ちょっと首の傷が痛くなったんで、平山さんに鎮痛剤を貰ってたんです。それで、親友には会えませんでした……」
 僕は適当な言い訳をし、焦響に会えなかったおおよその流れを伝えた。皆の表情はかなり強張っていた。エリミネートされたはずの奴が存在しているのか、それともそのマンションに特殊な電波網でも張ったのか。いずれにせよ、僕の知っている焦響はもう居ないのかもしれない。絶望はもう嫌という程味わった。あとは、焦響が生きていてくれることに希望を持とう。

 

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