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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈二十一〉

   2016年4月7日  

 俺を撃つのは構わない。だがこれ以上俺の大切な仲間を傷つけるのは……

 

 
 確かに何かがおかしい、毒でも入っていたのか。こんなに一斉に僕以外の人たちが失神するなんて……
「おい眇寨、まずいぞ。鏡にチアノーゼが出ている。呼吸もしていない。人工呼吸だ。早くしろ。俺は他の奴達を見るから、早く!」
 顔が蒼ざめている。これは本当にまずい。人工呼吸は高校で習ったので覚えていた。胸骨圧迫を三十回、人工呼吸二回を一秒に分けて。ダメだ、鏡。息をしてくれ。また胸骨圧迫を行い、人工呼吸……
「鏡、頼む。息をしてくれ! 死なないでくれ! もう俺から誰も奪わないでくれ、頼む……」
 神に、仏に、キリストに。誰だっていい……頼むから。お願いしますから……
「ケホッケホ、ヒューヒュー」
 鏡が呼吸を始めた。よかった、よく頑張ったぞ、鏡。ありがとう。
 しかし呼吸は喘息の様な感じで、気管が開ききっていない証拠だ。気道を確保出来る様に、顎が天井に向く様に抑え、平山に気道確保を伝えた。
「眇寨、よくやったぞ! 他の皆は、じきに目を覚ますだろう。鏡のチアノーゼも引いてきたな」
「でも平山さん、鏡って喘息持ちだったんですか? 気管が開ききっていません。俺の部屋にサルタノールがあるんで、持ってきてもらってもいいですか? 多分それで治まります」
「ぜ、喘息……」
 平山は一瞬ギョッとした表情をしたが、直ぐに部屋まで走り、吸入器を取ってきてくれた。鏡が息を吸い込むタイミングで、サルタノールを二回吸入させた。すると直ぐに気管が開いたらしく、正常な呼吸に戻った。良かったと、汗を拭った時にはっとした。ある意味キスをしてしまった。それが何かむず痒く、照れ臭かった。
「鏡とチューした気分で照れている所わりーが、何でお前だけ毒が効かなかったんだ? 俺は食わないで良かったぜ。でないと鏡は死んでたぜ」
 そうだ。なぜ僕にだけ毒が効かなかったのか。いや、僕のにだけ毒が入っていなかったんだ。
「平山さん、実は食事の時に味噌汁を交換したんです。さっき平山さんが弘平君を呼んだ隙に……髪の毛が入っていたんで、嫌だなぁと思ってとり変えたんです。もしかすると毒は味噌汁に入っていたんじゃぁ」
 そう話していると平山が僕が使った味噌汁の器を手に取った。そしてこっちへ来いと手招きした。
「眇寨、これはどう思う? このカップにだけ裏にバーコードがついている。他の奴らが使ったカップには無いんだ。ということは……」
「まさか、これにだけ毒が入っていなくて、それを飲むのが弘平君の筈だった。弘平君は真っ先に席について味噌汁を飲もうとしていた。まさか俺がすり替えるだなんて思ってもみなかったから……ということは毒を盛ったのは弘平君ってこと?」
 まさかとは思ったが、よくよく思い返して見ると、不審な点がいくつもあった。内通者、それは緋多弘平だった。彼の純真さ故、僕がすり替えているなんて思いもしなかったのだろう。それにしても、なぜ毒を盛る必要があったのだろう。頭をレモンの様に搾って考えた……結果、一つの仮説に行き着いた。

 

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