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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season10-3

   

 御影は実家で暮らすことにした。幼馴染のひばりとは自宅が近いためだ。

 久しぶりに御影は実家の家族と時間をともにする。だが、苦言が飛び交うばかりだった。

 探偵業に就いた解宗のことを快く思っていない。作家の祖父、タレントをしている母、テレビ番組プロデューサーの父のように、個性ある職業に就いてもらいたいというのを考えていた。

 探偵だって個性的だと思うが、若輩者の道を年配たちは導いてやりたかったのだろう。

 会話の中で、ひたすら探偵御影としてでは、なにひとつ助言やアドバイスはない。素っ気ない態度ばかりだ。

 手土産をもってこなかったのが失敗だったのかもしれない。

 探偵事務所のみんなはおそらく御影がこの家族に囲まれていることを想像して驚愕しているだろう。

 氷室が敬愛する江戸川 しょうらんの孫だという事実は、さすがに推理できなかった。

 そして、口々に御影のことで評価や落第点をつくことを談笑しているメンバーだった。

 

“備えあれば憂いなし、悲しみに暮れるまえに、悔やむことよりも前進することに意識は向いて、成長できる。だから人は努力する”。

 祖父がいった言葉だ。

 御影はしばらく実家で過ごすことになる。ひばりの送り迎えには都合がいいからだ。なにかあればすぐに駆けつけることができる。

 徒歩で10分もかからない。ほんとうに近所で幼馴染の縁だ。だが、小学校を卒業後、今日まで疎遠だったのは、御影がひばりの心に踏み込む勇気がなかったからだ。

 御影はひばりを自宅まで送り届けた。いま、この瞬間もストーカーに監視されていると考えて常に行動しなければならない。

 信頼できる幼馴染の御影と歩くひばりは、いつになく安心したような顔でたわいもない話をしていた。昔話に花が咲く。ここ最近の不安は完全に払拭されている。

 自宅周辺も確認し、適当に帰るといった。ひばりのスケジュールは一週間分をすでに把握している。外出のたびに御影が迎えにきて一緒に出かける。

 まるでデートのようだ。御影はこれほどたのしい依頼があることに浮かれていた。

 そんな幸福な時間を思いだしながら実家の食卓に堂々と座していた御影だった。

「ひばりちゃんが来てたらしいな」祖父が孫を片目をつぶりながらちらっとみた。久々に帰郷したのに、手ぶらもどってきたことに不満を抱いていた。

 家族水入らずで食卓を囲むが、その家族と家政婦はおみやげを期待していた。なんでもいい。気持ちが重要な家族なのだ。

「ええ、解宗ぼっちゃんがお相手をしておりました」

「そうか、なら手土産のひとつでも持ってきてもいいんじゃないか。しばらくここに寝泊まりするのだろう?」

「みやげ? なんだよまったくそんなもんこんどな…、てか、じいちゃんが不甲斐ないからおれの出番になったわけだろ」

「なにをいっておる。おまえに花をもたらせようとしたまでだぞ」
 江戸川 しょうらん(えどがわ しょうらん 77歳)。御影の祖父。推理小説作家。

「あら、またそんなこといって、ほんとうは孫に探偵なんてさせたくないといっていたのに…」
 江戸川 柾千代(えどがわ まさちよ 76歳)。御影の祖母。専業主婦。

「トッキー、こんかいはひばりちゃんの頼みだから許すけど、ほんとうは母さんたちも探偵業なんて辞めてもらいたいと思っているのよ」
 御影 胡蝶(みかげ こちょう 47歳)。旧姓は江戸川。御影の母だ。
 若き日の胡蝶はIQ200ある天才。天才少女としてタレントをしていた。どんな難解な問題も…解けてしまう。息子が産まれてからは専業主婦になっていたが、子離れした息子がひとり立ちした今、胡蝶は暇を持て余しIQの高さから父親のテレビ番組に出演している。知り合いの芸能事務所のタレントになり、クイズ番組やバラエティが主だった出演。
 クールビューティーで、あまりにも笑わない美人、頭脳明晰で、秀逸な存在で世の女性たちの憧れの的になって大人気になっている。もちろん美魔女という意味で男性からも人気がある。

 御影はそんな母親がテレビの世界で活躍しているのを見て、嫌気がさしていた。まるで氷室さんのように輝いていることにムカついていた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド