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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season10-4

   

 ひばりは面接のために証券会社に出かける。御影はボディーガードのため同行する。

 面接の間、一階ロビーで身を隠すように待機していた御影は、来社する多くのリクルートスーツに身を包む若者のなかに、違和感を覚えた。

 ついに見つけた。だが、まだ確証はない。ひとりだけ私服姿の男がいた。サングラスまでかけて、顔を隠すかのように。けっきょく10分ほど会社の前の歩道にたたずみ、ずっと中の様子を伺うようにしていたが、去っていった。

 御影はバレないようにカメラ撮影をした。あとでひばりに確認してもらうためにだ。

 ひばりの記憶には覚えはないようだ。

 御影はひばりとの空白の時間があることにも慎重になっていた。もしかしたら意外と身近な人物が怪しいのかもしれない。そう推理する。ひばりもまた、嘘をついているかもしれない。

 探偵は疑うことがまた視野を広げることになる。その着眼点ははずせない。

 御影はある提案をひばりに持ち掛ける。それはとても危険なことをひばりがしなければならない。

 探偵の御影がそれを提案するのは、もしひばりの身になにかあったときそれは罪に問われるかもしれない。

 しかし、ひばりは応じた。

 御影は頼ってもらいたいがために、ささやかな言葉を贈る。すると、子どものころのことを思いだした。

 

 翌日、御影はひばりが外出するといっていたので、自宅に立ち寄っていた。

「おはよう」御影は呼び鈴を押すと、ひばりはマンションの入り口に出てきた。

「おはよう、とっくん…」昨日、聴取していた表情よりも明るい印象があった。

「オートロックだから安心だね、この城は…」御影はいった。

「うん、自宅がいちばん安心できるけどね」愛想笑いをするひばりだった。根底にまだ恐怖心が根付いているようだ。やはり一度体感すると拭えるものではない。

「じゃ、行こう」

 この日はリクルートスーツに身を包み、大手証券会社に面接だった。面接を受けているときは目を離していても問題はない。多くの学生と行動をしている。企業の面接官もいる。
 ここでなにかが起きることはない。だが、御影は身を隠してこの会社付近に不審者がいないか、物陰から観察することにした。

「ほほう」御影の思惑は当たったかもしれない。「スーツばかりのなかに、ひとりだけモッズコートにブーツ。ジーパンときたか。金髪のロン毛は寝癖がひどいなぁ、無造作ヘアーはまるで台風が過ぎ去ったあとのようだ。サングラスをして顔を隠している。あきらかに不審者だ」と、御影はそういうファッションをしらないわけではない。外見は若く細身の男だ。

 ひばりが面接をしている証券会社をずっと通りから顔を見上げてにらんでいる。太陽光がガラスに反射して目が痛いだろう。だからサングラスをかけている。となると、推理はひとつにつながる。

「ひばりのストーカーか、まちがいない」

 御影はスマートフォンのカメラ機能を使って、その人物を撮影した。サングラスをかけているが、特徴のある人物だ。まず、このワンショットだけでじゅうぶん追える。

 面接を終えたひばりだった。

「お疲れさん、なんかいいことあった?」

 ひばりの顔は垢抜けていた。「うん、ちょっといいかも、ここが決まったらいいな」

「東京駅から徒歩五分。いいとこだ」御影もエールを送る。

「うん」ひばりの満面の笑顔に、不安材料を検証させるべきだろうか。ずっと下で待ち伏せている男がいた。だが、10分後には退散していった。あきらめたのだろうか。別のところで待ち伏せているのか。まだ油断はできない。どう切り出すべきか。御影の心理戦がはじまった。

「とっくん、こっちはどう? だれかそれらしいひといたかな?」ひばりのほうから切り出してくれた。

「ああ、これを見てくれ」御影はひばりが思っていたいじょうに心が強いことを思いだした。子どものころ、いつも強かったじゃないか。ひばりはなにも変わっていない。

 ひばりはじっと御影のスマートフォンの画面を見つめた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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