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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season10-5

   

 囮作戦開始。

 御影の警戒心をあざ笑うかのように、姿をいっこうに現さない黒い影。
 それに御影はひばりを囮にするこの作戦はミステイクだと思いはじめていた。

 街中の人ごみの中ではハイリスクだった。ひばりは覚悟を決めて続行するが、御影の負うリスクはぬぐえなかった。
 けっきょくこの日は徒労に終わったが、徒労に終わったことに安堵した。

 御影がひばりを送り届け帰宅する。その光景を見つめる視線があった。

 背後から襲撃される御影。間一髪でその背後の気配に気づき、返り討ちにする御影だった。

 その顔はしっている人物だった。

 派出所に連行されたストーカー。事情聴取をとると、思いがけないことをいった。
 ひばりを付け狙うのは、就職活動のたいへんさを共感するためだという。

 なぜ、そんな理由で、それになぜしっているのか、合点がいかない御影だった。

 するとこんどは“だれでもしっている”、といった。

 御影はそのことをしらなかった。

 

 ひばりは街中を歩いていた。ひとりで行動することにさせた御影は、その遠くから見守っていた。

「緊張感が張り詰めてきているな。思っていたいじょうにハイリスク、まずったかも…」

 囮作戦は自らの首を絞めていた。ひとりで行動してはダメだった。むしろ連絡をとりながらひばりの前衛にもうひとりおいておくべきだ。後方で見失ったときに前衛者に連絡して阻むためだ。

 混雑した街中では距離をあけて後方で監視するには、ひばりになにかあったさいすぐに助けられないことがわかった。

 聞きかじっただけの作戦を探偵資料の紙面だけで頭の中で想像して実行しているが、これは手痛いしっぺ返しがくるかもしれない。

「この作戦ハイリスクかもな、いったん中止しよう」御影はラインで連絡をとった。

 しかし、ひばりは覚悟を決めていた。

「とっくん、だいじょうぶだよ。わたしもやる。早く解決したいから。わたしの第一歩もこのままじゃ踏み出せない」

 おそらく証券会社での面接で手応えがあったからの鼓舞だろう。

 御影は噛みしめながら納得した。「了解。そのまま徘徊してくれ」

 ひばりはショウウィンドウを覗きながら、ブラブラと街中を歩みだしていた。

 物陰に隠れながらではなく数人の背後に身を隠しながら尾行をつづけている御影だった。まだまだ未熟だが、ストーカー相手くらいなら欺けると思っている。

 一時間ほどひばりを泳がせた。が、その周囲を警戒しながら尾行と監視の目を広げるも、それらしいストーカーは見当たらなかった。付け狙ってひばりを尾行しているような人物は、御影ただひとりだけだった。

「どうやら日常で追い回しているわけではないのか。もしかすると…」御影が推測する。そしてひとつの仮説が浮かび上がる。「地元に住んでいる人物だということか」

 面接のとき証券会社の前でビルを見上げていた人物は、関係ないのだろう。ひばりも見覚えがないということは一方的な感情なのだろう。

「いちばん厄介なんだよな。そういうやつって、これはめんどうな案件だ。一歩まちがえば修羅場になるぞ」

 けっきょく、御影のこの作戦は、空振りのまま時間だけがむだに過ぎていった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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