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ウパーディセーサ〈二十四〉

   2016年4月15日  

「死ね! 眇寨!」

 

 
 緋多を呼び出し、平山の机の前でひっそりと話した。
「どうしたんだい? 何かあったの?」
 人はこんなにも平然と嘘をつけるのか。人間不信、と迄はいかないが、何故か虚しく感じた。
「いいか緋多、これは誰にも言うな。皆が不安がる。俺たち三人だけの秘密だ」
「実はね、弘平君。アンチリードセルプログラムがバグを起こしたらしいんだ。そして修復するにもかなり時間がかかりそうなんだ」
「そんな! 平山さんのプログラムが壊れるなんて……」
 声を震わせひっそりと呟いた。しかし、その声の震えは驚いた様子ではなく、どこか影の有る様な、チャンスを掴んだとでもいう感じだった。
「俺一人では時間がかかりすぎる。だからそれとなく手伝ってくれ。ずっとお前までシステムルームに居ると、まず宮守が不振がる。丁度いい頃合い、皆が寝静まってからでもいい。なんとかバグを処理しないと、今度は宮守の肩の負傷だけではすまないだろう」
 平山は慎重に、本当に焦っているかの様子だった。冷や汗をかき、メガネの曇りにも気にもとめずに。
「わかりました。僕も全力を尽くします」
 実は、この事は宮守にも伝えていた。これは僕達の陽動作戦だ。だからアンチリードセルプログラムを一度解く。もしもの時に備え、宮守の武力が必要だ。
 それから平山はプログラム修正、というか全く別のデタラメプログラムをバグだと装って修正しているふりをした。夜になると緋多が手伝いに来て、そのデタラメプログラムの修正を手伝っている。
 僕も深夜に平山達の手伝いをした。平山は敢えていつも通り、メガネを着け外ししている。そんな時に僕は緋多にある質問を投げかけた。
「ねぇ弘平君。敵がリードセルを使って侵入して来るとすれば何処からだろう?」
「この地下基地に隣接している遊園地の機械室。すなわち、客間の右奥の壁。あそこを仮にぶち抜いたとすれば、機械室に繋がるよ」
 何のためらいも無くすっと答えた。ただ、これは僕も平山も、宮守に聞いていたので知っていた。なら次の質問だ。
「こんな時に、なんだけど。弘平君はどうしてここに入ったの? やっぱり目の前でエリミネートを見たの?」
「う、うんそうだよ……公園を散歩してたらさぁ……」
 明らかにさっきとテンポが違う。目も右上を向いていた。ということは、身に覚えのない事を想像して言った。つまり嘘だ。
「実は謝らなくちゃいけない事があるんだ。前に皆が失神した時。夕食の味噌汁を弘平君のと交換しちゃったんだ。多分、弘平君の髪の毛だと思うんだけど、味噌汁に浮いててさ。冗談半分ですり替えちゃった。ゴメン!」
「えっ、えっ! そ、そうだったんだ、全然大丈夫だよ。自分の髪の毛だしね……」
 緋多は腕を組み足を組換えた。目はキョロキョロと落ち着かない様子。腕を組むのは防御姿勢。足を組むのも、取り繕っている証拠だ。かなり動揺している様だった。
「はーあ、喉が渇いちまったぜ。コーヒーでも入れて来るか」
 平山がグーっと伸びをして立ち上がった。
「あっ、ダメですよ! 独りで行っちゃあ。僕も行きます! 弘平君もコーヒーでいい?」
「あっ、うん。ありがとう」
 無理に作り笑いをして、またコンピュータをいじり出した。

 

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