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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

鬼神楽 1

   

小さな田舎町で暮らす神楽は、父と母が大好きだった。
しかし、小学校に入って初めての参観日、若い父兄の中に白髪交じりの両親がいることで、クラスメイトからからかわれるようになる。
のち、神楽が成長した時、とあることの発端となる最初の出来事が、はじまる。

 

 
 神楽はわからなかった。

 小学校に入り初めての授業参観、クラスメイトの中で両親または片親すら来てない生徒はなく、新任の先生も精一杯はりきり、自慢のお母さんお父さんにいいところを見せたくて、我先にと率先して手を挙げる中、神楽だけは俯き、身体を小さく丸めている。
 ひとりだけ違う動きをすることで、とても目立ってしまっていることに気づかない。
 新任の先生としても、クラスの中からつまはじきにされている子がいると、教職員や父兄からの心証も悪く、教師としての価値を下げられかねない。
 自分はよく気が利き、生徒に慕われる先生であり続けなければならないし、そうありたいと思う野心から、ひとり手をあげずに身体を小さくしている神楽を指した。
「じゃあ、上川さん。上川神楽さんに答えてもらおうかな」
 あまったるい声で神楽の名を口にした。
 生まれも育ちも都会で、両親共に教師、親戚には教育関係の重役に君臨している者もいる、生粋の教育者一族に育ち、また、我が子が一番と自負する両親に育てられたこの担任は、無意識にどうすれば人に好かれ嫌われず、また人を意のままに動かせるのかを知っていた。
 あまったるい声をだせばたいていの大人は顔を緩めるし、男たちは下心を抱いて彼女の言うとおりにする。
 それは子供相手でも通用することは検証済で、父兄にとっても心象がいいに決まっていると、勝手に思っていた。
 ところが
「先生、どういうことですの? うちの子が手を挙げていたではないの。その子は手を挙げていませんでしたわ」
 都会と違い、田舎では縦社会が出来上がっていて、それが何年も続く、なんとも面倒な習慣がある。
 うちの子がといったこの女性、歳の頃四十前半だろうか、遅くに出来た子ほどかわいいというが、この田舎町ではかなり有名な親子だった。
 彼女の祖父がこの町にかなり貢献したようで、一目置かれていることも合わさり、逆らわない方がいいとされているひとりでもある。
 知らなかったわけではないが、とっさに失敗をしたと心の中で呟いた。
「すみません、気づいていたのですが、上川さんは内気で率先してアピールのできない子で」
 自分はあくまでも内気な上川神楽をどうにかしてみんなの輪に入れたくてしたことだと主張をした。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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