幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

Egg〜スパイの恋人〜episode5

   

「パリで殺される予定だったのは俺達だ。メドゥーサなんて存在しない。そしてフォックスは、何らかの目的で俺達を嵌める為の仕掛け人にされた。彼女も俺達と同様で、一緒に殺される予定だった。と、こう考えた方が自然じゃないか?」

 命からがら逃げ延びた3人ではあったが、この先の運命は神のみぞ知ることとなる。

 物臭不器用スナイパー×お調子者天才ハッカー×謎の女!!
 ハードボイルドスパイアクション!

 

 ベッ!! と口の中の苦味を吐き飛ばすと、それは赤く床に付いた。
 軽く手を上げながら歩いてきた女が、俺の傍らで歩みを止めた。
「あんたら、見覚えがある……わね?」
 女の疑問符に、ようやく男が声を上げた。
「そろそろ、薬が切れる頃だろ?」
 男はそういいながら女に歩みよると、俺と同様に女を殴り飛ばした。俺の身体に女の身体がぶつかった。続いて覆いかぶさるように崩れた女の前髪を男は掴みあげると、更に頬を往復で三発ほど殴りつけてから、薄笑み浮かべて囁いた。
「お前みたいな女がひれ伏す姿が一番面白いんだよな」
 最後に、俺の身体に女を叩き付けた。
「オトモダチも一緒にしてやれ!」
 男が合図すると、外から更に4人の男達が俺達をぐるりと取り囲んだ。その中の二人が引きずるように連れてきたのは……
「リック!!」
 相棒は泣きそうな顔で、俺等二人を見下ろしながら言った。
「ラーム……ごめん……近付きすぎた」
 男二人がリックへと交互に、腹に膝打ちを、続いてグリップで背中に鈍痛を食らわせた。蹲って動けない奴の襟元を掴むと、女の上に叩き付けた。当たり前だが、一番下の俺は結構キツイ。
 粗大ゴミ同様積み重ねられた俺達に、男はイヤラしく呟いた。
「スパイが任務中殺されても、それは事故死扱いだ。無論、会社は責任を一切負う事は無い」
 俺が人間布団の下で、苦しそうに言い返す。
「……契約だな……」
「よく覚えていたな」
 ざけんな。
 男の引き金に力が込もり始める。
「待てよ!!」
 人間布団の下で、呻いた。
「なんだ、命乞いか?」
「いいや。こんな苦しい体勢で死なせてくれんな。せめて、タバコの一本でも吸わせてくれよ」
 その願いに、男は少しばかり躊躇したように見えた。
「別にいいだろ? 漫画や映画じゃねぇんだ。その隙にドロンなんてありえねぇだろ」
「……まぁ、いいだろ……手を貸してやれ」
 ぐるりと取り囲みながら拳銃を向けていた男達が、俺達三人を無理矢理立たせた。
「さぁ、タバコは俺の胸ポケットのやつにしてくれよ。吸いなれたやつが一番いいんだ」
 男が様子を伺いつつ、拳銃を向けたまま俺の胸ポケットからタバコを一本取り出した。それを咥えさせ、ご丁寧にも火まで点けてくれた。
「ありがとよ」
 っと、言い終わるか終わらないかのうちにフィルターを噛み潰した。
「リック」
「?!」
 合図だと言わんばかりに、ポツリと名を呼んでおく。
 ベッ! とタバコを奴らの下へと吐き出したとき、タバコのフィルターが軽く爆破して、視界が見る見る間に煙幕へと包まれていく。
 同時に俺は女の頭を押し下げながら身を低くして慌てる男達の間を駆け抜けた。リックも同じように身を低くして這い出す。教会内からはむやみに発砲を繰り返す男達の銃声と怒声が響き渡り、俺達は丁度脇に止まっていたタクシーを強奪して走り去った。

 助手席で、女が呟く。
「……悔しい……」
 どん! っとダッシュケースに拳が叩きつけられた。
「……私……思い出した……」

*****

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16