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ウパーディセーサ〈二十七〉

   2016年4月25日  

 なぁ、弘平君……お母さんは元気?

 

 
「勇作って、まさか泉 勇作?」
「えっ、そうですけど……」
「僕だよ! 保育所で一緒だった、緋多弘平だよ!」
 彼の目は見開いたままで、暫く固まっていた。が、すぐに立ち上がってかなり大きな声で言った。
「弘平君!」
 その声は、ガヤガヤとクツワムシの様に鳴いてる客たちを踏みつけた。
「そうだよ! 思い出してくれた? まさかこんな偶然……嘘と思うかもしれないけど今朝、勇作君の夢を見たんだ! 今頃どうしてるんだろうって、思ってたんだけど……」
 そうして、十五年ぶりの再開に募る話を肴に酒を酌み交わした。ガキ大将だった裕司はどうしたのかとか、小学校の校区は違ったけれど、何度か見かけた事があるだとか。まだまだ宵の口だと、居酒屋に蛍の光が流れる迄飲み明かした。千鳥足で肩を組み合い、公園でのお互いの家へ繋がる分かれ道迄来た時、勇作が目を見開き。不審な笑みを浮かべ、酔っている僕には意味の分からない事を口にした。
「なぁ、弘平君……お母さんは元気?」

 頭が痛い。昨日の記憶の一部がない。僕は何をしていたんだっけ? 昨日の出来事を思い返してみた。
 とてつもなく広く、面倒な現場を終え、確か居酒屋へ行ったんだ。独りで? まさか……そうだ、勇作君に会ったんだ。保育園で一緒だった。いつも優しい勇作君に。
 電話が鳴った。仕事に遅刻している? いや待て、今日は休みだ。携帯の画面には(勇作君)と表示されている。頭を掻きながら、電話に出た。

(おはよう! 弘平君。まだ寝てた? せっかくだし一緒に遊びに行こうよ!)
「う、うーん。そうだね! 今から用意して出るよ。公園で待ち合わせしよう」

 とにかく頭が痛い。何を呑んだっけ? そうか、安い焼酎をロックで呑んでいたせいか……まず熱いシャワーにでも入ろう。
 熱いシャワーといっても、四十二度はさすがに熱すぎた。一気に汗が二日酔いとともに流れ出た。少し吐き気もしたが、それも一時の事だろう。体を拭きながら、昨日飲み残したポカリスエットを一息で飲み干した。久しぶりの休みなんだ。少しお洒落をしよう。デニムに白のティーシャツ。シャンブレーのシャツを羽織り、ニット帽をかぶった。
 やっぱり秋なんだ、と風を嗅いで実感した。空気に木々達の声が混じっている。「そろそろ着替えよう!」と。
 公園で待ち合わせした僕達は、その足で原宿へ行くことにした。
 原宿なんていつ振りだろう? 中学二年の時に安っぽいティーシャツを黒人の店員にぼったくられた事があった。それ以来、原宿を倦厭して来たのだが、二人でいれば大丈夫だろう。
 竹下通りは平日だというのにあの細い商店街がミツバチの巣の様に蠢いている。勇作は口にピアスが開いているらしく、先ずはボディーピアスの店に入った。黒いショーケースの中に銀や金、黒色など様々な色、形のピアスが陳列されている。僕にとっては凄い新鮮というか、刺激的だった。勇作は銀色の輪っかのピアスを選び、下唇の中心にそれを着けた。もともと顔立ちの良い勇作には、それがとても似合っていた。

 

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