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ハートフル

家族の肖像(3)〜青春篇〜

   2016年5月2日  

見た目が少年のような遥のコンプレクスを、受け止めてくれた利久と菜々美。映画サークルでも、誰も遥の容姿についてからかう人も、問い詰める人も無く、すんなりと受け入れてくれた事に、心地よさを感じた。サークルの新歓コンパにも参加し、遥は、心から安らぎ楽しんでいる自分に気づくのであった。

 

午後の授業を終えると、遥はサークル棟へと向かった。
長い渡り廊下で、後ろから声がした。
「おーいっ!遥―っ!」
急になれなれしく呼びかけられたので、遥は少々不機嫌な気持ちになりながらも後ろを振り向くと、そこには、昼にサークル室で一緒になった、須賀利久がいた。
利久は、人懐っこい表情で遥の肩に手を置くと
「サークル室行くんだろ?俺も今行くところだったんだ。」
と息を切らしながらしゃべった。
「ああ、そうだけど、いきなり名前で『遥』はないだろ?いつから友達になったんだよ。」
と遥はこの不躾な利久の態度に少々腹立たしさを感じながら言った。
遥は、高校時代は、親友と呼べる人間もいなかった。
高校では学校指定の制服と言うものが存在していたおかげで、登下校はスカートを着用しなくてはならず、仕方なくスカートを履き、学校へ着くとすぐにジャージに着替えていた。
その為、見た目は非常に少年のようで、それが尚更、皆の好奇の目を集めてしまっていた。
遥は、絵画部に入り、授業以外の時間は、絵を描く事だけに没頭して、他の事は考えないようにしていた。
だから、こうして利久から親しげに話掛けられても、正直どう反応してよいのかわからなかった。
「なに仏頂面してるんだよ。スマイル、すまいるだよ。遥!」
「わかったよ。お前って変わってるな。悪いが今まで自分の事こんな親しげに呼ぶ奴がいなかったもんでね。」
「そうなのか?俺は、遥に非常に興味がある。遥って呼んでもいいか?」
「今更?」
遥は、急におかしくて笑った。
「いいよ。それで気が済むなら。じゃあ自分はなんて呼んだらいいんだ?」
「そうだなぁ、としひさでも、とし君でもなんでもいいや。呼びやすい様に呼んでくれよ。」
「じゃあ、利久って呼ぶよ。改めてよろしくな。」
そう言った時、急に風が舞い、遥のサラサラのショートヘアの前髪がふわりと風になびき、遥は右手で前髪を掻き上げた。
その様子を見ていた利久は、
「お前、ほんと男だったらめっちゃモテるタイプだよな。」
「男じゃ無くても、誕生日やバレンタインには女子から色々プレゼントはされてたな。」
そう言って笑った。
「そう言うお前だって、モテなかったわけじゃないだろ?身長180はあるよな?自分は165だから、男性としては低い方だし、お前みたいに筋肉付いてないし」
とグーで利久の肩を、ぽんっと殴りながら言った。

 

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