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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

鬼神楽 5

   

 退院するまでの間に遅れた分以上の知識を得るほどの飲み込みに、経過情報に目を通した弘光は、その結果に二度三度と間違いではないかと見直したくらいだった。

◆◇◆◇◆

 神楽は軽く息を吐いた。
 つねに聞かれて昔を思い出し、改めて自分の置かれている立場を確認することができた。
 上川神楽は、あの日、九十九弘光の出した条件を受け入れた時点で、もうこの世にはいないのだ。
 あの日までの自分はもういない。
 今こうしている上川神楽は、金で買われ金で改造されて、意思を持たないただの人形。
 九十九家にとって利用価値があると判断されたに過ぎない。
 その価値が発揮されるまで温存、いや、試されているだけ。
 まるで死刑台の階段をゆっくりとのぼらされているようなもの。
 神楽にはそう感じられていた。
「わかりました。神楽様がそうお決めになり後悔されないのでしたら、もうつねはこのことには触れません。ですが、つねはいつでも神楽様の御味方ですよ? あまりご自身を追い込まないよう……」
 深く頭を下げ、掃除の続きをしに戻っていった。

◆◇◆◇◆

 神楽と弘樹が成人式に出る年の前年末、世間では年の瀬の慌ただしさがテレビのニュースで流れ、屋敷では使用人たちが年越しの用意と翌日のお節の用意、そして挨拶に来る客人用のおもてなし準備で目まぐるしい忙しさを見せている。
 そんな中、恒例の年の瀬行事など興味がないという己の姿を貫く九十九家当主の姿があった。
 書斎に呼び出された弘樹と神楽は、なんとも言えない空気に押し負けないよう立っているのが精一杯の中、もうひとり呼び出した人が姿を見せるのを待っていた。
「遅くなりすみません」
 真冬の寒さの中、額に汗を滲ませて小太りの中年男性が忙しなく姿を見せた。
 一見頼りなさそうに見えるが、かなりの手腕を持っている九十九家専属のお抱え弁護士である。
「ご当主、お待たせして……」
 代々九十九の当主は気が短く、そして我が強い人がなる傾向があり、時間にも神経質なほど煩かった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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