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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

鬼神楽 5

   

 この弁護士も引き継ぎの際にそのことを厳しく言われていたのだろう、自分より当主の方が待っていた事態に顔が青ざめていく。
「挨拶はいい。時間を押したと思うのであれば、前置きを省け」
 言い方はあれだが、遠回しに気にするなと言っている。
 同じ屋敷で暮らし、年に数回言葉を交わすだけだが、観察していれば九十九弘光という男が人としてどういう者なのか、それくらいのことはわかってくるもの。
 神楽は弘光のことを不器用な人だと思うようになっていた。
「は、はい。それでは弁護士立ち合いのもと、九十九弘樹様、上川神楽様の判断を記させていただきます」
 弘樹が成人を迎える時に経験したことを、今、息子と養い子に向けて伝える時がきた。
 第三者を立ち会わせ、後々意見の食い違い、記憶違いの相続争いにならないようにするための処置である。
 なんとなくではあるが、弘樹は勘付いていたことがあった。
 九十九の血を引くのは自分しかいない今、父の後継者は自分であると。
 何かの折、父に呼び出され弁護士などの見届け人の立ち合いがあれば、それは次期後継者の指名だろうと。
 だがふと思う、なぜその場に上川神楽がいるのだろうか……と。
 なにかにつけて目立つ存在であった。
 父が屋敷に置いている以上、その判断に意見はできないが、いつか追い出してやろうと。
 自分が実権を握った時、最初にするのは上川神楽の追放だと、この十年余り、ずっと思っていた。
 同席させるということは、なにかしら九十九関係のものを与えるか、もしくは駒として使うのかだろう。
 与えるのは気に入らないが、駒として使うのなら問題はない。
 しかし、どうつかうのだろうと考えた先にあったのは、神楽は女であること、女を駒として使うのは政略結婚くらいか……まさかと思うが、自分と結婚をしろというのではないか?
 そんな結末を想像して、ますます神楽の存在が目障りになり、汚物でもみるように視線を送った。
 弘樹が勝手に間違った方へと想像している間にも、弘光の話は淡々と進み、ひとつも漏らすことなく弁護士が明記していく。

 

≪つづく≫

 

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