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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈三十一〉

   2016年5月9日  

早速だが、君に任務を与えたい。極めて重要な任務だ。これは君にしかできない

 

 
 いつの間にか遠い目で昨日までの日を懐かしんでいた僕は、気を取り直して部屋の中を見渡した。
 やはり一番目立つのが、机の上の山積みになった資料。いったい何の資料なのだろう……他には壁に貼られたサッカー選手のポスター。松原はサッカーが好きなのだろうか? あいにく僕はサッカーが苦手だ。サッカーがというよりも、球技全般が苦手だ。走るのも、泳ぐのも。運動音痴そのものだ。
 さっき松原は言った。僕はプログラミングに精通していると……
 そんなたいしたものではない。ただ少しの間、コンピューター部でパソコンをいじっていただけなのだから。
 色んな不安が僕をタコ殴りにしてくる。
「じゃ、あとは宜しくね! 弘平君、晩飯は一緒に食べよう。また夕方に戻ってくるから、それまで松原さんにいろいろと教えてもらってて!」
 えっ、今からこのカタツムリと二人きりになるのか? 明らかに不審な笑みを浮かべ去っていった勇作に後で仕返しをしてやろう。もし僕の純潔を汚されたらタダじゃ済まさない。
「さて、それじゃぁ……」
 そういって、松原が何か作業に取り掛かるのかと思いきや、僕の頭をワサワサと探り出した。
「なっ、何するんですか! 徹子じゃないんだから、飴なんて出てきませんよ!」
 軽く舌を出しておどける松原に殺意が湧いた。
「いい反応ね。その調子よ! さて、私たちはこのプログラムを使って人が消されるのを阻止するの。例の、人が消える電波信号をいち早く察知して回線を切り替えることによって回避できるわ。今からシミュレーションしてみましょう」
 松原は立派な椅子に浅く腰掛け、僕を手招きした。僕がそこまでコンピューターが得意ではないことを告げる間もなく、一から丁寧に説明してくれた。
 このシミュレーションは本物の電波が飛んできた時と同じように、自分で無数の電波信号の中から人を消滅させる物を一早く発見し、それをジャミングさせてそもそもの目的地への到達を回避させる。これはなかなかの至難の技だ。
 先ず松原が手本を見せてくれ、その次に僕がやってみることにした。

「ありえない……初めてでこの記録は今までにないわ。こんな逸材を発見した水《かつみょう》様はやはりラブリーね。そしてそんな貴方もラブリーよ!」
 何故かおおはしゃぎで僕の頭をまたグリグリと撫でた。
 そんなこんなで、夕食時になりやっと解放された僕は憂鬱な気持ちで勇作を探していた。明日も、明後日も松原と訓練。少し嫌気がさしてきた。褒められるのは嬉しいけれども、何故か実感が湧かない。そんなに凄い事なのか?
 遠くの方の廊下で勇作が手を振っている。走る気力もなく、トボトボと歩いていった。

「違うのよ。これはあえてのダミーなの。それを踏まえて選択しなくちゃぁ、本番の時に取り乱しちゃうわよ」
「そんな事言われたって、これじゃぁどれがどれだか分からないですよ」
「それを見極めるのが貴方の最初の任務よ! どうして初めの時のようにできないのかしら?」
 あれから半月。毎日松原との訓練の繰り返し。初めてやった時は上手くいったのだが、回を重ねる毎にボロが出てきた。
 そんな毎日を送っていると一つの疑問が出てきた。
 本番なんてあるのだろうか? 訓練の日々になんだか実感が湧かない。

 

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