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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season11-3

   

 警官総動員1000人。氷室探偵社も警備にあたるが、12時になると驚愕的なことが起きた。

 突然、豹が出現したのだ。うなり声、咆哮、けたたましい敵意のある目と牙が、まさに本物だと疑う余地はなかった。

 凶暴性が人々の脳裏に記憶している豹が眼前に現れたことでパニックになった。

 警官や氷室探偵社のメンバーですら意表をつかれたかのように一瞬でも怪盗レオパルドのことを忘れていた。

 まさにレオパルドが出現した。それがいったいどんな意味があるかわからないが、人間を威嚇するように吠え続けるも襲ってきたりはしない。そして、唐突に消えたのだ。

 なにがなんだかわからないまま、レッド・ダイヤモンドのガラスケースを確認すると、赤い石も消えていた。

 ほんの数秒だったが、どうやって盗んだのかわからない。消えてしまったのだ。

 怪盗レオパルドが現れて盗んでいった。

 突然の豹の出現で場が混乱していたため、そのトリックやフェイクのようなことだろうと、あたりを調査する探偵社一同だった。

 すると、悔しいばかりのトリックがみつかった。

 

「それで何時に来るって?」川上が改めて問う。

「きいてなかったのか?」火守がなじった。「12時だぞ。お昼休みのピーク時に、人ごみに紛れてくるんだろうな」

「そこなんだよな、けっきょく人の目が注目している中、どうやって盗めるってんだ?」川上がいった。

「たしかにそれは不可解なことだ。というよりありえない」火守は同意するようにいった。

 探偵たちは押し黙り、思考を働かせていた。眼前に輝く宝石を、人のが鑑賞しているというのに、どうやってこれだけの人が見ているなか盗めるというのか。馬鹿な怪盗に付き合わされる名探偵事務所の名折れというものだ。

「考えてもわからない。会場はこれだけ広く、来客も多いしセキュリティーは万全。警官の動員数は1000人。会場内外と配備している。昼の12時にどうやって…、いくら客たちの混雑に紛れたとしてもむりは百も承知」川上がいった。

「そうね、どう考えても隙はない。犯行予告なんてしないで、深夜ならまだしも」水桐が戦略の網をかいくぐれる方法をつぶしていく。

「そうだな、我々の勝機は見込みがあるというのだよ」森谷は勝ち気にいった。「が…」そこでちいさくつぶやき自己分析している。いまいったばかりの発言の結果とはちがうことが脳裏に浮かんでいる。犯人像がちらちらとよぎって集中できずにいた。

「だいじょうぶですか、森谷さん」御影がその様子に気づいて声をかけた。

「問題ないのだよ。御影くんも周囲を警戒すること…」

「わかってます」

 森谷は御影の姿をじっと見つめていた。もしかしたら、この犯行は破られるかもしれない。そう予感がしていた。

「こちらに、決め手がないのだよ…」森谷はぼそっと御影を見つめながらいった。

 まもなく12時。

「そろそろだ。警戒を怠るな」警部が無線で警備にあたる警官、探偵にむけて発信していた。

 12時になった。

 レッド・ダイヤモンドが展示されているところから20メートルほど離れたところで、突如、驚異的な存在が現れた。

 怪盗レオパルドの象徴でもある猛獣、豹が会場内に現れた。

 見るからに凶暴とわかる牙、鋭き眼光、けたたましい呻り声に、人間たちは穏やかに賑わう楽しいはずの展示会を悲鳴に変えた。

「なんだあの豹は、どこから入った?」警部は恐怖におびえていた。

 警部だけではない、人間はだれもがその脅威の存在に理解度はある。猛獣で人間を襲い殺すのだと。その認識があるから恐怖するのだ。

 怪盗レオパルド、可愛くない獣であると改めて認識させるのにじゅうぶんな迫力な演出だろう。

 唯一、視線をずらし、脳裏に意識がこびりついていた森谷がガラスケースに一瞬だが目をむけた。いや視界にはいった。

 ガラスケースの中にあれだけ目立ち赤く輝く宝石がない。森谷の驚嘆する声に探偵や刑事は振り返る。主催者の宝田や持ち主のサイエフ・グランジーも「オーノー」と悲鳴を上げていた。

「どうして、いつ?」火守は呆然となった。が、豹の呻り声と畏怖されるような咆哮に警戒を向けなければならない。一度にふたつのことを刑事、探偵は思考を働かせる。

 豹が現れて森谷がガラスケースの中にレッド・ダイヤモンドがなくなっていると認識するまでの時間は、数秒だった。おそらく10秒はかかっていない。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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