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ノンジャンル

星座アラベスク<7>てんびん座

   

 てんびん座の人は、豊かな社交性を持ち、争いを好まない。
 てんびん座の人に適した職業は、秘書、外交官。

 

 マルコ・ポーロは、この旅が楽しくて仕方なかった。
 父や叔父とともにベネチアを発ち、現在は、ユーフラテス川が見えるところまで来ている。
 これから先の旅程を思えば、まだまだ旅の始まりでしかない。
 だが、もうすでに魅了されていたのである。
 赤茶けた、なにもない大地が地平線まで広がっている――。
 石造りの家々が立て込んだベネチアでは想像も出来なかった、清潔で透明な砂漠なのだ。
 キャラバンサライには、黄金、宝石、香料、果物などを商う市場がある――。
 父は、こんなに素敵な品物を扱う商人なのだ。
 マルコ・ポーロは、父親を誇らしく思った。
 マルコ・ポーロがいちばん楽しんだのは、夜、話を聞くことであった。
 砂漠では、夕食後、人々が集まり、長老や語部の話を聞くのが習慣になっていた。
 象を掴み上げる巨大な鳥――。
 宝石に囲まれて眠る王女――。
 魔神を呼び出す呪文――。
 こうした話が、「信じられないだろうが、これは儂が見たことでな……」と語られるのである。
 若いマルコ・ポーロの冒険心は、限りなく広がっていくのであった。

 その夜も、マルコ・ポーロは、巨大なテントの中央に座っている、ハイヤームという名の老人を見つめていた。
 噂によると、ハイヤームは、詩人にして数学者、そして、誰よりも知恵のある賢人、ということであった。
 ハイヤームは、話を期待する人々を見回すと、荘重な声で言った。
「信じられないだろうが、これは、儂自身の話でな……」

 

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