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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season11-8

   

 栗原に直接電話が入った。相棒ではなく依頼人からだ。外国人の口調だった。事前準備が足りない。
 遺憾な思いも発散できずに栗原は犯行予告時間に突入した。やはり視察もなければ準備時間がないため、存在の違和感を展示場内のお客の記憶に残してしまった。

 依頼人に事情を話した。だが、すぐにその記憶は吹き飛ぶと公約する。
 というのも豹が出現するからだ。騒然することで栗原の異質な印象は消える。

 騒ぎに乗じて怪盗レオパルドがレッド・ダイヤモンドを盗難に成功。
 会場内を出るとすぐに依頼人に電話をかけた。
 が、まさかこの通話をどこかのだれかに盗聴されていたとはしりもしなかった。

 栗原の前にはタクシーから降りる相棒が現れた。東京ベイ有明ワシントンホテルに逃げ込む算段になっている。

 タクシードライバーがふたりの存在を目撃しているが、相棒が雇った偽ドライバーと説明した。

 栗原は単身ホテルへ籠城することになる。ほとぼりが冷めるまで身を隠す。
 しかし、その部屋が暴かれるとは考えもしていなかった。盲点であったにも関わらず破かれたのは、遠藤の盗聴の手柄でもあった。

 そして御影は問いただす。依頼人に利用されたことをしらない栗原に。

 

 栗原の携帯に、依頼人から直電がはいった。

「ハロー」依頼人は男だった。日本人ではないようだ。口調でわかるが、はっきりと日本語が聞き取れるほどうまい。

「ええ…、あなたが依頼人ね」栗原の方が礼儀がなっていない。

「そうだよ、よろしく」

「はい」だが、栗原は世間話をするつもりはない。

 いろいろ要求をした。これだけのコンディションで、わがままに付き合わされる身になれば、だれだってごねるものだ。

 11時30分になって入場した栗原。だが、予想外な展開に身を晒す。

「なんで、入場客はみんな正装してんのよ。女はドレス着込んで、男はタキシードじゃない…、私の恰好は場違いよ。ひとりとしてカジュアルな服装がいない。ドレスコードがあるんじゃん。なんでこういう情報いわないのよ。だから事前の情報と現場検証をさせてもらう時間がないからこういう失敗をするのよ」
 怒涛のつぶやきで錯乱している怪盗レオパルド。だが、引き返せない。すでにその姿は一般客はもちろん、展示会の監視カメラ、そして警備をしている警官にですら目撃されている。

 栗原は会場の角で携帯電話をかけた。そして現状に身を置いている状況を教えた。

 電話口の相手は依頼人だった。

“今となってはどうにもならない。無難な恰好というので目立たないファッションで出向いたあなたのミスです。もっと用心して観察しなかった手痛いことですが、毅然としていればいい。ほんとうにそういうタイプの女性客を装うこと。少なからず視線はそれる。時間になればそんな記憶を払拭するほどの脅威が出現します。だいじょうぶ。記憶は上書きされる。強烈な豹によって”。

 たしかに、と栗原は納得した。このまま計画どおりやるしかない。

 そして12時になった。栗原は氷室探偵事務所の探偵が見張っていたレッド・ダイヤモンドのガラスケース付近に近づいた。御影も近くにいる。気づかれそうだと思ったが、変装もしているため外見では気づかれにくい。ファッション性に違和感を抱かれたら負けだと思ったが、探偵たちは気づかなかったようだ。

 ガラスケースにフェイクの布をかけることも成功した。そして、豹が現れ、注意がむいた。

 ガラスケースに近づく栗原のことなどだれも気にとめていない。するりとガラスケースをずらし内部に手を入れてレッド・ダイヤモンドを奪った。

 忍び足で存在を消しながら退いていった。後ろを意識しながらゆっくりと後ずさりをする。前方を向きながらさがっているため後姿になっていないから逃げるという行動には映っていない。

 探偵たちは後姿でその場から退く者を捜している。が、気づかれなかったようだ。ついに出口にたどり着き、警部が動くな、と会場内に響くほどの声で怒鳴り散らしていたが、タイミングよく栗原は会場から出ていった後だった。

 栗原は会場から出るとすぐに携帯電話をかけた。

 

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