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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

巣鴨振り込め詐欺殺人事件、その7

   

容疑者であった中野が、宣言通りに犯人を暴きだした。

そのことに刑事の神野は憤慨しながらも、犯人を連行する。

同じ大学に犯罪グループが存在したことに驚愕する恵理だったが…

さらにその奥の真実にたどり着いた時、彼女は怒りに震えた!

そして策のないまま、敵の本拠地への乗り込んでいく…。

 

12

 中野は私と別れた後、そのまま池袋駅に向かいます。彼の住まいは池袋なのだそうですが、彼は電車に乗り再び巣鴨に戻りました。駅前のスーパーで栄養ドリンク、ビール、そしておつまみ類を買って事務所へと向かいます。事務所にたどり着いた中野は水をコップ一杯飲んだ後、電話をかけたそうです。
「こんばんは、真壁さん。お元気ですか?……いえ、悲惨な食生活を送ってらっしゃるのではと危惧したものですから。それで今回もお仕事を請け負って頂けますか?」
 ずいぶん厄介な相手のようです。いえむしろ、同類とされる方なのかもしれません。中野は私と宮野君が持ってきたリストを開きました。
「…ええ、報酬は五万。すぐに振り込みますよ。いつも通り、該当者のメッセージ履歴をコピペしてくれるだけでいいですよ」
 一般の人には今の会話の意味が分からないかもしれません。私は父から聞いた知識があるので、手に取るようにわかりました。中野はメール、もしくはSNSの通信記録の取引を行っているのです。電子メールやSNSのやり取りは、サーバーを経由してやり取りが行われます。するとやり取りの内容はデータとして残っているのです。時に警察や検察がこうしたデータを証拠として提示する事はありますね。つまりネットを介しての連絡は関係のない第三者に見られている可能性だってあるのですよ。当然、中野がこれらを行うことは違法です。情報を提供した側も刑事告訴される可能性があり、コンプライアンス違反で会社をクビになるでしょう。…懲罰があって誰もやらないからこそ、お金が手に入りやすいということはありますが。中野は真壁という相手に対して、詰めの話し合いをしています。
「…今俺を担当している奴が巣鴨署の神野という奴なんですよ。もし何かあっても、そいつから捜査依頼があったって言えば問題にはなりませんよ」
 まさか、ここで神野さんの前が出てくるとは思いませんでした。それだけで私は驚いたのですが、次の瞬間、中野は大いに驚いたのです。
「なんですって?神野がすでに閲覧してるだと?」
 それは中野にとってあまりに衝撃的な出来事でした。つまり、警察はすでに大学の一部サークルが運用している名簿を把握しているということ。では警察は、神野さんはなぜ大学のサークルを検挙しないのか。大学のサークルの名簿では実害が起きていないから検挙できないという可能性もあるでしょう。もしくは犯人を泳がせているため、とそう取れることもできます。しかし、巣鴨では既に詐欺事件が社会問題となっている中で、大学のサークルによる個人情報流失を見逃すことは決して警察にはプラスにはなりません。もし大事件を起こしていると分かれば、知っていて見逃した警察に責任追及の目が向くことになるのですから。巣鴨の詐欺事件を追う神野さんが、大学のサークルの名簿の存在を知っているということ。中野はこの点に強い違和感を感じたと言います。中野は買い物袋から栄養ドリンクを取り出し、一気に飲み干しました。甘ったるく、どこか苦々しい液体が、お腹の中を通過していっています。中野は、ふうと一つ呼吸をしました。何か覚悟を決めたような、そんなりりしい表情だったことでしょう。
「真壁さん、神野が調べた対象者を調べられますか?…ええ、全て。それともう一人、宮野郁。こいつの情報は後でお送りしますんで。こいつは特に念入りでお願いしますよ。こみこみ十万でいかがですか。…オッケー、商談成立。今振り込みましたんで。速攻で頼みますよ。深夜三時を過ぎたら一時間置きに催促しますからね。よろしく」
 中野は電話を切り、真壁という人物からの返信を待っています。その間、中野はネットに潜り、ある情報について探しています。その情報とは、巣鴨刑事殺人事件。私の両親が殺された件についてでした。ノートに時事系列をまとめていったそうですが、詐欺事件とは何の関係もないのに何がしたいのかよくわかりません。深夜二時半になり真壁からの返信をよんで、中野はほくそ笑んだのです。実はこれは、彼が二つの事件の真相にたどり着いたということ。そして、事件の全貌が見えた中野は私に次のようにメールを打ちました。
《ご両親を殺した犯人を特定できたら、マンションを売ってくれ》
 このメールの背景には、そのようなことがあったのでした。

 宮野君とは履修がかぶっている授業がいくつかあります。本日なら三限の授業が一緒でした。彼がさぼっていることはほとんどなく、授業に出ればすぐに会えるものと思っていましたが、その授業に彼は出席していませんでした。授業のはじめに「今日、空いてる?」とメールを打ちましたが、授業の終わっても返信はありません。中野に名簿を売って二日が経ったので、中野が名簿を利用して学生に迷惑メールを送っていないか、調査に付き合わせようとしたのに。ついていません。授業終了後、彼とよく一緒にいる中森君が近くにいたので聞いてみました。ですが、中森君の発言からは一昨日から授業に出ていないということです。つまり、彼は中野と会った後、大学に来ていないということになります。実は、ちょうど目の前にいる中森君は名簿に名前が載り、私が印をつけた中の一人でした。そのため、中森君に詐欺メールが届いていないか確認することにしました。

 

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