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ハートフル

家族の肖像(4)~青春篇~

   2016年6月1日  

 7月に入り、サークルにも馴染めた遥であった。
 夏休みには、作品の撮影の為に、映画部は合宿をする事になる。
 その台本は、遥が男性役のラブストーリーで、相手が菜々美と言う事で少々緊張する遥。
 更に、利久は、遥の心の悩みを「性同一性障害」と言う症状を具体的に話してくれ、全てを受け入れてくれる。
 そんな利久へ、親友と言う気持ちが湧きあがる遥であった。

 

 7月に入り、もうじき夏休みを迎える大学構内は、少々浮き足立っているようだった。
 遥は、課題の「デッサン」を描き終え、教授へ提出した後、サークル棟へと向かっていた。
 そこへ菜々美が小走りにやってきた。
「ねぇ、ハル君。映画部で合宿やるって聞いた?」
「いや?まだ聞いてないけど、やるの?」
「うん。葛西部長の実家がコテージを経営してるんで、そこで毎年3日間だけ合宿するんだって。勿論、ハル君も参加するでしょ?」
「そうだな、面白そう。」
「秋の学園祭での上映作品も、撮影する予定らしいよ。」
「じゃあ、菜々美は本格的に女優デビューだな。おめでとう。」
「そうよ。私は主演女優なんだから。」
「ところで肝心の台本は?」
「今、葛西先輩が必死になって書いてるみたいよ。」
 そう言って、菜々美は小さく笑った。

 二人がサークル室へ着くと、既に利久が来ていた。
 カメラの使い方を、副部長の山里に教えてもらっている所だった。
「よお!遥!俺さまになってるか?」
「まあまあって感じかな。」
 と軽く受け流した。
 そうしていると、ソファーに寝ていた葛西が、のっそりと起き上がった。
 昨夜も、ここで泊まって、台本を書いていたのであろう。
 葛西は、眠そうな目をこすりながら遥に向かって尋ねた。
「岩崎さぁ、合宿参加できる?」
「はい。大丈夫です。日にちが判れば、バイトの方も早めに休み貰いますんで。」
 遥は、一人暮らしと言う事もあって、なるべく親に負担を掛けないよう、運送業者の荷物の仕分けのバイトをしていた。
 中央センターに集荷された荷物が、地域ごとに、ベルトコンベアに乗ってくる荷物を分けて行く、単純だが、以外にも肉体労働で、職場は女性は遥一人である。
 通称「荷物引き」と言われるこのバイトは、深夜時給が高いので、遥にとっては、環境的にもありがたい仕事でもあった。
「実はさ、菜々美君の相手役なんだけど、色々考えた結果、うちのサークル、そんないい男いないから、岩崎やってもらってもいいかな?」
 一瞬、サークル室内は水を打ったようにしんとした。
 しかしすぐに、
「それ、凄くいいアイデアですよね。」

 

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