幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season12-2

   

 爆弾魔から女優のキサラを守るというボディーガードの依頼。小柴は探偵たちを集め誰が受け持つか相談する。

 最高難易度Sの任務だ。氷室名探偵しか受けてはならない。しかし、警察沙汰にしないというのも条件にあり今回はだれでもいいと小柴は判断した。

 命に代えて擁護するというものだ。なかなか挙手する者はいない。それぞれに理由があるため、結局のところ御影に回ってきた。

 御影はまだこの日、探偵事務所に顔を出していなかった。そしてサポートとして小柴が抜擢された。氷室の指示だった。

 御影にはまだ助手事務員がいない。そのためにお目付け役の小柴が適任だった。

 御影は午前中有給をもらっており神保町あたりで古書店めぐりをしていた。
 いつになくブレイクタイムをし適度に古書を購入して12時に出社するつもりでランチを食べていた。

 そろそろ出社しないと、と電車に乗り込んだ。定刻になっても電車が発進しない。
 すると、まさかの出来事が起きたことを御影は聞いてしまった。

 

 小柴は探偵たちに説明し、誰が受け持つか相談した。

 人気沸騰中の若く才能もあり美人である女優のボディーガード。だが、その対処は爆弾魔から命をかけた擁護任務である。

 探偵たちは浮かない顔をしていた。

 最高難易度S。氷室探偵しか受けてはならない依頼のクラスである。しかし小柴は言った。

「これはだれでもいいの。警察沙汰を避けるというのであれば氷室さんはむしろサポート役。動くわけにはいかない。あなたたちのだれかがその身を犠牲にして擁護する。それが任務。おそらく氷室さんも端で見ているから心配しないで…」ニコッと微笑む小柴だった。

 小柴のその笑みにも恐怖心が込みあがるが、それぞれに進んで挙手できない理由があった。

 火守は斉藤の視線が鋭く背中に刺さり挙手できなかった。若き女優で人気沸騰中の美人でかわいいボディーガードって、ボディーのどこをガードする気? という声が囁かれていた。

 火守は目を背けていた。

 雲田は最初から乗る気はない。打ってつけではあるが、だが主力としてはやや心配であるし、おそらく女優に嫌われそうなイメージが全員の脳裏に浮かんだ。

 森谷は依頼人から外してもらうように言われていた。見た目重視だからだ。森谷の外見がフェイクとしらないからむりもない。脱皮すればおそらく気に入ってもらえるとしても、やはり高齢である以上、頼りなく思われるだろう。

 大地は小柴が任せることができなかった。常に危機回避能力が発動してしまい精神的に酷使し、恐怖心に耐えられず依頼人や女優の前で気絶するのが見え見えだった。

 水桐と川上が抜擢であるが、別案件がある。川上はペット捜しに躍起になっていた。水桐は気乗りがしないと首を縦に振らない。若い女優というのが気に入らないだけだ。

「なら、御影くんにしたら?」と推薦した。

「そうか、御影くんにもそろそろこういう事案を任せるのもいいかも…、あとだれかサポートとしてついてもらって…」小柴は気づいた。ほかのだれもサポートできない状態であったことに。

「なら、小柴くんがお目付け役になるといい」氷室が唐突に現れ提案した。

「私が? 事務員で氷室さんの後方支援者である私が?」

「しかたあるまい、御影くんにはまだ助手事務員がいないのだから」

 全身の視線を浴びている小柴だった。舌打ちをした小柴は氷室をにらんだ。「御影くんに話してみます」

「その御影くんはなにをしている?」氷室はいたずらっぽく言った。

「今日は午後から顔をだすとのことです。午前中は有給をとらせました。たまには休ませるようにと。でも12時には来てもらう予定です」佐伯事務員が事務処理しながら答えた。

「もう13時になるではないか。なにをしている?」氷室は険しい顔になった。ルーズなところは理由なくして目をつぶる性格ではない。携帯電話がある以上、しっかりと事前に連絡を入れるべき。

「小柴さんはなにかきいてないですよね?」佐伯が言った。

「いえ、午前は有給とることは命じました。それ意外はなにも…、この女優ボディーガードの件は御影くんに任せたいので、連絡をとってもらっていいですか? 現状把握をしなければなりません。彼は職務をまっとうしなければならない」小柴は言った。

「あ、はい…」佐伯はパソコン内で管理している氷室探偵事務所の職員全員の名簿のファイルから御影の連絡先を探す。

 佐伯が連絡するも、御影はでなかった。「でません…」

「なにしてるの、ったく、ちっ、ちっ、ちちちっ」小柴のイラつきはマックスに近いようだ。

「落ち着きたまえ、小柴くん…」氷室も冷や汗をかくくらい引いていた。

「佐伯さん」小柴は次なる手段に出た。これが最終手段だ。「御影くんの給与、減給しておいて」

 探偵たち全員が背筋を凍てつかせた。全員が勝手な行動をすれば、そういう段階を経て減給になるんだ、そう連想した。

“気をつけよう”。と静かにそれぞれがお茶をすすっていた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


コメントを残す

おすすめ作品