幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

被害者は

   

 空には飛行機雲が見える。いつもと変わらない日常。けれど、どうやら彼らには行かなければならないところがあるらしい。今日は絶対に。

 

 
 ふと窓から空を見上げたら、飛行機雲を見つけた。水色の空の中に白い線が遠くまで引かれている。

「すいません、お待たせしました」

 後ろから声をかけられた。振り返る。軽く片手を挙げた。お疲れ、相葉ちゃん。笑いかけると後輩は眉をひそめた。その呼び方、やめてもらえませんか。

 相葉ちゃんは男だ。それなりに顔立ちもよい方だから、女子に影ながら人気もある。けれど最大の欠点があった。女子が苦手なのだ。だから相葉ちゃん。女子に耐性がついたら、ちゃんと君づけにしてあげるつもりだ。

「ごめん、ごめん。それより早く行こうか」

 相葉ちゃんは大きくため息が漏らして、肩を落とした。

「先輩、わざわざ教室の前で待っていなくてもよかったんですけど」

 窓枠に寄りかかっていた身体を離すと、少し不機嫌な調子で言われた。足元に置いたかばんを掴み上げる。
 何も先輩を気遣って言ったわけではないだろう。顔がよいのは相葉ちゃんだけではない。女子の視線を集めるだけなら、俺にもできる。

「いいじゃん、少しでも長く相葉ちゃんの顔を見たかったの」
「気持ち悪いこと言わないでください」

 相葉ちゃんは睨みをきかせて一歩下がった。冗談だって、かったいなあ。へらへらと笑ってみる。またため息をつかれた。
 変なことを言ってふざけると、相葉ちゃんは呆れたように息を吐き出すことばかりだ。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品