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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season12-3

   

 12時26分。神保町の丸美出版社の一階ゴミ置き場で爆発が起きた。

 テレビ報道されているリアルなニュースで状況をしらせる。探偵社一同釘づけになっていた。御影がその現場に単身調査しているというのだからだ。

 御影が現場にいることで、凄惨な爆発事件に探偵たちは内心見習いのことが心配だった。

 水桐の一番に事務所を出ようとする。ほかの探偵もあとを続こうとするが、氷室が阻む。

 それは最小限の被害ですませるためだ。氷室は自ら出向くつもりだった。そこに小柴が同行する。
 御影には女優のボディーガードの依頼があるため、状況把握後、赴くことになる。

 小柴は芸能事務所に爆発物が送られてきたが、それが気になっていた。

 現場で御影と合流した氷室たち。小柴の行動や態度が、御影は違和感を覚えてならない。

“まさか、犯人は…”、と勘繰ってしまう。

 

 日常の時間が平常とともに流れている。摩擦や嫌悪、ストレスが渦巻く大都会。誰もが待ちわびているお昼どきの12時だ。晴天だが、12月の冬入りの寒さがコートなくしては過ごせない日和。

 肩をすくめ背を丸め、足早にお昼を買いながら会社にもどる女性や、飲食店で寛ぐために定食やラーメンを食べて食後の一服やコーヒーで午後への活力を満たそうとしている男性たち。

 これはよくみる人々が過ごす街の光景だろう。これを脅かす瞬間があと数秒で起きる。

 千代田線「新御茶ノ水駅」から徒歩10分。神保町駅方面へと徒歩で10分のところに、株式会社丸美出版(まるびしゅっぱん)がある。10階建ての自社ビル。

 12時26分のこと。株式会社丸美出版の一階に隣接するゴミ置き場で小規模な爆発が起きた。

 あたりは騒然となり、小石や砂誇りが舞い上がりあたりの視界を阻む。灰色の煙がビルをカーテンのように隠した。幸いなのは風がほとんどないが、乾いた空気と寒気が人々の心をか細く弱いものにした。

「御影のやつ、いまこの場所にいるのか…」川上が言った。

「ちょっと大丈夫なの?」水桐がいつになく心配した。以前にも爆発事件に巻き込まれたことが数回あるため、御影はほんとうに不運だといった。

「氷室さんがいったとおりだ。天命だな」火守がいった。

「ほっほっほっほ、御影くんは難事件のある場所に引き寄せられるのかな。だとすると脅威なのだよ」森谷がいった。

「だが、これじっさいのところ原因はなんだって? ほんとうにテロリストが?」川上が言った。

「静かに…」水桐がリモコンのボリュームを上げた。

 だが、けっきょく詳しい内容はわからないままだった。

「氷室さん、なにか連絡は?」火守は氷室にきく。警視庁から直接契約している門外顧問、犯罪コンサルタントとして助言などをしているため、こういう難事件には依頼がくるのだ。
 なので、この事件の犯人像について依頼がくるのではないかと勘ぐった。

「いや、まだその段階ですら警察はないのだろうな。しかし御影くんのプライベート・アイ、探偵の目ならなにか現場を見ただけでなにかしろの違和感や情報や、もしくは犯人らしき人物を見つけるかもな」氷室は言った。

「そうかな」火守は首をかしげていた。氷室にそこまでいわせる御影に嫉妬しているのだろう。

 水桐が立ち上がった。そして扉へと足を運ぶ。

「どこへいくの水桐探偵…」小柴が呼び止めた。

「どこって、御影くんひとりじゃ心もとないでしょ。プライベート・アイがあっても経験値は未熟。それにかなり危険な場所に彼は無防備に調査しようとしている。なにかしろの万全をかす必要がある。わたしが支援するわ」水桐は当たり前のように言った。

 小柴は反論しなかった。一理あり、とうぜんの判断と行動であると認めた。

 すると川上が立ち上がった。ペット捜しは一時放棄しようと真剣な顔つきが水桐と同じ気持ちであるようだ。

 森谷と大地も無言なまま事務所を出ようとしていた。

「ダメだ」氷室が呼び止めた。「断じて助けにいってはいけない。もし仮に巻き込まれたら、御影くんひとりでいいところをあなたたち全員を失うわけにはいかない」

「ちょっと氷室探偵、見損なったわよ。それで仲間だといえるの?」水桐が言った。

「俺たちがいればそんな被害はぜったいにない。大地さんがいればもっと危機を回避できる」川上が言った。

 大地はうなずいていた。

「氷室探偵、だいじょうぶなのだよ」森谷も反論した。

「ダメだ!」やや声を荒げた氷室。

 支援組は驚嘆して言葉を失った。こんな声を張り上げる氷室をはじめてみたからだ。

「きみたちはここにいるんだ。私が行く」氷室の考えは、これが最小限な犠牲と、もし警察からの助太刀があるのなら近くにいる方がいい。こちらから動くことが経費削減。犠牲の最小。

「氷室さん…」小柴は声が小さく漏れていた。

 水桐たちは押し黙り、うつむきながら少し考えていた。「わかった、そうする。氷室さんに任せます」

 同意するように川上たちはうなずいた。

「よし、それでいい」氷室はそういうとそのまま扉へむかった。

「待ってください」小柴が呼び止めた。「私もいきます」

 誰もが予想外な出来事となった。

「小柴さんなにいってんの?」川上はあまりの行動をとる小柴に言った。

「いいでしょ。私はこのあと御影くんにだいじな依頼をお願いしないといけないの。ちょっとそれに気になることがあるし…」小柴は言った。そしてさきほど依頼してきた芸能事務所の真野の言っていたことを思い出す。

 新人女優のキサラ宛てに爆発物が送られてきた。

 氷室がじっと小柴を見つめていた。

「そうか、わかった。いいだろう」

「ありがとうございます」小柴は資料と手荷物を持って氷室のあとを追った。

「めずらしいチームになったな」川上が言った。

「まったくだ。氷室名探偵に見習い探偵御影、そして事務管理の小柴さんの三人で調査か」火守は笑った。

 

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