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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season12-4

   

 丸美出版社に犯人から連絡があった。

 爆弾魔こと、“償いの背教者”と名乗る不気味な人物。変声機を使っているため男女の区別もわからない。

 丸美出版社の社員、人事課長とその部下、社長秘書は犯罪に疎い素人のため、パニック状態だった。なにせビルの一階ゴミ捨て場で爆発が起こされたのでは犯人は本気だ。

 狙いは社長の命。社長はなんら身に覚えがないが、犯人は怨恨の意がある物言いだった。

 神田警察署の茂呂警部が指揮をとることになった。

 一瞬、この中に犯人がいるのではないかと勘ぐったが、否定する。爆発に巻き込まれる可能性があるほどの威力だった。自ら近くにいてその威力を把握していながら爆発させるほど浅はかではない。

 そこに、氷室名探偵が社長室に姿を現す。御影と小柴も。

 茂呂警部よりも判断力、直観力のある氷室が現場を唐突に仕切りはじめた。

 これだけの事件だというのに、御影や小柴に出る幕はない。影のように助言できる御影も出番はない。

 そこへ犯人からの電話が…。

 

 爆弾魔、償いの背教者と自称する犯人からの声明。なぜ、丸美出版社が狙われたのか、社長の命が狙われているのか。次はまちがいなく社長の命だ。

「直接送りつけてくるかもしれないな…」丸美社長は蒼白している。

 社長室の扉がノックされた。開かれた扉から秘書の姫田だった。谷田や林、遠山を連れて連携をとるために社長室で待機することを命じた。

「社長、神田警察署の刑事さんがいらっしゃいました」

「神田警察署の強行犯係、茂呂 光永(もろ みつなが 35歳)警部です」短髪だが、腕っぷしはない。華奢な体形でひ弱だ。目だけは鋭いが、体が貧弱だから犯人検挙のときはいつもやられてしまう。しかしひとを動かすのには長けていて、もっぱら複数捜査に向いている頭脳派だった。

 今回はテロリストの仕業だと思っての出番となった。そのうち警視庁がどや顔で現場を指揮するのは目にみえている。だが、それまでは茂呂が現場責任者となる。

 ほかの茂呂の後ろにいる刑事たちを紹介する。

「自分で言えます。飯嶌 蘇道(いいじま そみち 28歳)警部補です」生真面目な性格。だが童顔でまだまだ二十歳に見える。

「志麻 きよ美(しま きよみ 30歳)。巡査長です。下の爆発事件で一番に駆けつけました。いちおうこちらに来るよう命令があり同席させていただきます」女性だが、捜査の経験でいえば飯嶌よりもベテランだ。外見も女性らしい体格ではない。警官の制服の中になにかプロテクターでも着用しているのかもしれないが、あきらかに体育会系の肉体派である印象がみられる。

「椛島 圭介(もみじま けいすけ 25歳)巡査です。志麻巡査長についてきました。未熟ですがよろしくお願いいたします」青二才だ。だが、爆発事件が起きたこの場で盾にはなるほどの巨漢。190センチの80キロ。ラグビーをやっていたという。「わりにあわねーよ。見た目だけで特別任務って」これが口癖だった。

「丸美社長、爆弾魔から狙われているのはわかりました。でも一刻も早くここから逃げたほうがいいでしょう。まず自宅にもどりそこで事情をうかがいたい」茂呂は提案した。人命第一だからだ。

「それは却下します」丸美社長は拒否した。「私はどんなことが起ころうと、身に覚えのない怨恨で社長室を空ける気にはならない。犯人の思惑には屈しない。爆発が起こるまえに止めてくれ、刑事だろ!」

 逆に罵られた茂呂警部たちだった。

「電話があったときの録音を聞かせてもらえますか?」茂呂は秘書に頼んだ。

「はい、ではいま用意をします」姫田は言った。谷田、遠山に手伝ってもらい社長室の重厚感あるテーブルに用意した。

「林さん、あなたが最初に電話を受けたのですね」茂呂は言った。

「そうです。恐ろしくて、途中からあまり覚えてません。課長の指示にしたがってましたから…」

「谷田課長、あなたはなかなか迅速に行動されている。林さんが犯人の対応をしているときに、社長に連絡し警察に通報もさせている。見事な手際。無駄のない時間の使い方です」

「あ、ありがとうございます」谷田は礼を言った。

 茂呂警部は誉めていたが目の奥では疑っていた。犯人の仲間ではないかと。

「いや、そうではない。ここにいる全員が爆弾魔ではない」茂呂は言った。

「警部、どうしてそう結論づけるのですか?」飯嶌警部補が言った。

「谷田課長は直観力がある。でもやはりここにいる全員がこれほどの犯罪をするのには爆発に近い場所にいた。時限装置か遠隔装置かもしれないが、爆発に巻き込まれる。全員がこのビルにいたというではないか。一階で爆発するのであれば巻き込まれる。幸い、そこまでの被害には及ばなかったようだ。死傷者ゼロだからな」茂呂は説明した。

 丸美社長も、社員も、そして警官たちもその考えに納得していた。

「電話がかかってきた番号がわかりました。非通知せずかけてきてます」志麻巡査長が電話機を調べてわかったことだ。

「迂闊なのか、狙いがあるのか、発信してみろ」茂呂警部が言った。

「出ません。電源が切られているアナウンスが流れてます」飯嶌がさっそくかけてみた。

「そうか。追跡はできないな。だが、電源を入れたときにそれは可能になる。そっちは任せるぞ」茂呂は飯嶌に指示した。

「はい、わかりました」

「警部」そこに椛島が連絡を受けた内容を話す。「いま爆発現場付近ですごい人物が現れたと…」

「なに、犯人か…、いやそんなはずはないか。だれだ?」茂呂警部は椛島巡査に言った。

「氷室名探偵だそうです」

 

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