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ほんのわずかな色恋話

   2016年6月15日  

 和彩と速斗は、日曜日に一日練習することになった。
 その際速斗の家を訪ねてきたのは、和彩と大和だった。
 大和の指導と昼から合流した心治の指導を受け、ほんの僅かな色恋話になった。

 

 
 礼からの依頼を受けて、和彩と速斗は二人での練習頻度を上げた。
 完成度はそう悪くはないが、それでは困る。
 完璧でなければ、意味がないのだ。
 これは相手がだれであろうと関係ない。
 二人の持っている、潜在的なプライドというやつだ。
 だから礼からの依頼を受けた土曜日の翌日、和彩も速斗も休みの日曜日に速斗の家で練習しようという話がどちらともなくすんなり決まった。
 和彩の家は音楽をする人間ばかりが住むマンションだが、やはり一日中全力で練習するというわけにはいかない。
 同じマンションに心治も大和も住んでいるから、何だかんだ三人がまとまってしまう。
 この日も和彩は大和と雪崩れ込んだ心治の家から、速斗の家に出向いている。

 約束の時間に玄関チャイムが鳴り、速斗がドアを開けると和彩と一緒に大和も来訪していた。
「大和君が来るのは聞いてなかったはずだけど?」
 大和のアポなし突撃訪問に、少々驚いた速斗。
「心治んちにいても仕方ないもん。男二人で転がってるより音楽にあふれる空間に身を置きたいと思ってさ!」
 口だけは達者だが、上下スウェットサンダル姿の今の外見では到底クラシック音楽を専門に扱っている人間とは思えない。
 そしてほのかに酒臭い。
「昨日飲んだのが抜けてないよ大和君。」
 酒の匂いは嫌いではない。
 仁斗もよく飲んでいる。
 だがいじらないわけにはいかないではないか!
「ちょっとだけな?ちょろっとだけ日本酒を嗜んだだけだ。」
“ちょっと”と言いつつ、昨晩飲んだことをあっさりと認める大和。
「そうね。おちょこの底の方にちょっとしか入ってなかったのに、瞬殺だったわね。まるで飲み明かしたみたいな顔していびきかいて寝てたわよ。で?あんな舌の先しかなかった量の酒が今日までにおうわけなんかないわよね?なんで酒臭いの?」
 昨晩のものではないだろう、ほのかに漂う甘い香り。
「ちょっとだけ景気づけに酎ハイ飲んじゃった!」
 そう言ってペロッと舌を出して笑ってごまかす大和。
 家を出る前に開けていた缶は酎ハイだったのかと、和彩は数十分前の記憶をたどる。
「誰の酎ハイ開けたの?」
 自分のだったら帰りにおごらせようと思いながら、和彩は大和に問う。
「心治の。」
「命縮めるようなことしてニヤニヤしないで、気持ち悪い。心治君はまだ寝てるの?」
「さぁ?寝てるんじゃないの?」
 妙に他人行儀なところを見ると、そこそこいい感じに酒が回っているようだ。
「使えないと思ったら窓から放り出すから。」
「冷たい事言わないでよ~!」
「お邪魔します。」
「無視しないで!」
 いつも通りの二人のやり取りに、速斗はつい苦笑いをこぼした。
 この二人を見ていると、完全に主導権を握った姉ときれいに座布団にされた弟を見ているように見えてならない。

 

 

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