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ショート・ショート

カルボナーラを教えてえください

   

 カルボナーラの作り方を教えてください。僕の古本屋に変なお客さんがやってきた。

 

 
 カルボナーラの作り方を教えてください。第一声がそれだったから、僕はカウンター越しに口をあんぐりと開けて固まった。
 言っておくがここはパスタ料理店ではない。もはや、飲食店でもない。町のしがない古本屋だ。いつなんどき潰れてもおかしくはないような。

「えっと、僕に訊くよりも、レシピ本を見た方がいいと思うけど」

 口をへの字にし、愛想の一つもない顔でただただじっとこちらを見てくる。返事がなくても、答えは知れた。
 腕時計を見る。百円ショップで買った代物だ。午後八時四十八分。閉店まであと十二分。この時間になると、お客さんはほとんどこない。早く店じまいにすることもできる。そうしたい。だがここでの稼ぎが自分の今後の生活を左右するのだと思い出して、いつもきっちり営業時間を守っている。

 レジカウンターを挟んで目の前に立つ少女は、近くの高校の制服を着ていた。確か高校生は二十二時までに家に帰らなければならないのではなかったか。そんな法律があった気がする。これはさっさと帰るように促した方がよいだろう。

「君、よくわからないんだけど、早く家に帰った方がいいよ。外も真っ暗だろうし」
「カルボナーラの作り方を教えてください」

 凛としていてかたくなな声だった。意思の固さを感じる。参ったな。

 決して不良少女というわけでもないのだろう。髪は黒いし制服だって着崩してはいない。見た目は生徒の模範のようだった。

 

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