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ウパーディセーサ〈四十三〉

   2016年6月20日  

自衛隊での勤務、大変なのでしょうね。でも日本を平和に保つ為の他にない立派なお仕事だと思います。これからも日本の平和を宜しくお願いします。

 

 
 習志野駐屯地へ来て二年目の春。俺は実家に仕送りをする為に郵便局に来ていた。
 俺が自衛隊に入って三年経ったある日、親父が急性白血病で死んだ。少ない年金で節制した生活を送っている母を不憫に思い、一人暮らしの俺にはもったいない程の給料の半分を仕送りしていた。そもそも俺は酒とタバコさえあればそれでいい。車が欲しいわけでもなく、家が欲しいわけでもない。自衛隊の汚くて狭い寮に比べれば、今のこのアパートは城のようだ。
 昼間の郵便局は混雑している。番号札を取り、椅子に腰掛け、郵便局の冊子を読んでいた。番号順では次が俺の番だ。しかし三十七番のおばあさんがフルーツギフトを局員と相談しながら選んでいるようで、しばらく時間がかかりそうだ。
 三十分後、おばあさんはまだ決めかねているようで、マンゴーにするか、イチゴにするか迷っている。
 このままでは郵便局で俺の休日が終わってしまう。そう思い、おもむろにキョロキョロと辺りを見回していると、隣の窓口が開き、俺の番号が呼ばれた。
「三十八番のお客様。こちらでお伺いします」
 冊子を置き、窓口まで歩いたときにハッとした。
 あまりの突然の出来事に、つい顔を背けてしまった。
 窓口の反対側で微笑んでいる女性。
 肩まで伸ばした黒髪に澄んだ瞳。桃色に染まった頬に、薄く透き通った微笑を含んだ唇。
 髪は眉のあたりで真っ直ぐに切り揃えられており、耳の下部で一段短くなっている。
 少女のようにあどけない笑顔を見せるその女性に胸が高鳴った。トンネルから出た瞬間西陽が差し込むように眩い。なんとか鼓動を整え任務は完了した。
 しかし、郵便局を出ても、家に帰っても、酒を飲んでも、その胸の高鳴りが治ることはなかった。
 夜、布団に入って一心に目を閉じていた。すると瞼の裏側にさっきの女性局員が映し出される。俺は勢いよく立ち上がり、頭を振った。俺の脳はおかしくなってしまったのではないか? そう思った。
 結局一睡もできないまま、歩いて駐屯地に向かった。
 朝の訓練はいつの間にか終わっていた。訓練を行った記憶があまりない。しかし疲労感だけが残っている。俺はついにおかしくなってしまったと考え、昼休みに医務室へ向かった。
「宮守さん。これは重大な病気です……」

 

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