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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season12-6

   

 御影は、紙永が犯人である可能性としての動機が、キサラへの芸能界引退の強要や丸美出版社の社長を狙っての爆弾予告などを鑑みて、もっとも犯人像に近い存在であると推理する。

 小柴もその考えに同意するように口を挟むと、御影も微笑んだ。

 丸美出版社の爆発の起因として、キサラが原因であると御影の推理の中で小柴が共感した発言が、キサラを傷つけた。

 キサラも知らない紙永の爆弾を作る知識と技術。それは独学で学んだものか、他者に授けられたものか、だが復讐をするために得たスキルであるなら居所をつきとめ、事情聴取する必要がある。

 御影は言葉巧みにリードをとる。キサラは完全に御影の言葉を信じるようになり、言うことをきいてもらえることで探偵としてもボディーガードしやすくなる。その上下関係をはっきりさせた。

 御影の憶測はまだ終わらない。この応接室に真犯人候補がいる。それが真野だ。紙永と手を組んでいることも考えられる。

 まだまだ浅い思考の上に成り立つ推理だ。

 一同はキサラの生放送があるため、赤坂へ向かう。

 

 御影はつづける。「彼はなにもしていない、インサイダーに手をかけたことはないと主張する。だが、彼も青ざめるほど彼へつながる証拠が発見され、言い逃れができない状況に追い込まれて解雇となった。表沙汰にはならなかったかもしれないが、彼は人生に汚名をつけられた。そして彼女も失った」

「たしかに女優となったキサラさんを狙ったこともうなずける。証拠に脅迫として芸能界引退を強要していることからみて寄りを戻す脅迫とみれるわね」小柴がはじめて探偵のようにくちをはさんだ。

 御影はニヤリと微笑んだ。「そうですよ。丸美出版社にも不当に解雇され、恨みはある。実際、社長を狙っている。インサイダー取引は事実としてあるのなら、それは上役あたりが手掛けてしまい罪を新入社員に押しつけた。その黒幕をもし爆弾魔である紙永がつきとめていたのであれば命を狙っている社長を爆破する狙いにも合点はいく」

「そうよね。会社はインサイダー取引でずいぶんと痛手をくった。でもコンプライアンスを遵守しなかった若い社員がやったこと。社長が詫びることでなんとか盛り返した。そして彼女も手を引いたことで女優業にスポットを浴びるという華々しい活躍。怨恨は深く晴らしたいと思うのが犯人像として浮かび上がる」小柴は同感した。

「人間関係を洗うのが手っ取り早い。警察はまだこの事実はしらない。まさか女優のキサラさんがかかわっていることなんて…」御影は言った。

「そうね。警察に届けていたら、丸美出版社の爆発は防げたかもしれない」小柴はきょう起きた爆発事件はキサラが原因といってしまった。

「わ、わたしじゃない。そんなこといっても関係ないでしょ」顔を両手で塞ぐキサラ。

「小柴さん…」御影が声をかけた。

「ごめんなさい…」小柴がきょとんと反省していた。めずらしく舌を滑らせた。

「御影さん」真野が呼びかけた。「やはり、爆弾魔はその彼だと?」

「どうですかね。ただ犯人像が彼しかいない。裏づける証拠が必要です。キサラさんが知っている彼はおそらく爆弾を作るスキルなんてなかったはずだ」

 キサラは泣いているのか、うなずくことで意思表示をみせた。

「なら、彼は会社を辞め、キサラさんと別れた今日までに独学かで学んだ可能性がある。復讐するための知識と技術を習得したのかもしれない」

 キサラは黙っていた。真野も唖然と口を開いていた。どうしようかと考えている様子だ。

「このさき女優業をする以上、外にでたら爆弾がどこに仕掛けられているかわからない。だが、活動をするなら全力で守ります。探偵は体を張ることはしませんが、犯人を捕まえます」御影の意思表示をしめした。

「お願いします」真野とキサラは頭を下げた。

 これで上下関係ははっきりした。いざとなったら探偵のいうことが優先だとこのときに伏線として脳裏に植えつけたのだ。

 御影の洗脳にちかい匠な言葉だった。追い込まれている女優には誘いやすい甘美な言葉だろう。

「やるようになったわね。まるで詐欺師ね」小柴は小さい声で言った。だが、御影の聴覚にはかすかに聞こえていた。

「人聞きが悪い」御影はニヤリと笑みを浮かべた。

 小柴はそのときの御影の横顔が、誰かを彷彿させているように感じた。

 真野はキサラの肩をやさしく撫でていた。

 御影はちらっとふたりを視界の中に入れた。御影はすでにプライベート・アイを発動させていた。その目で見ているのは疑念だった。

 マネージャーの真野。御影は犯人候補のひとりとしてみていた。動機がないわけではない。かつは女優を目指していたようだが、裏方として芸能事務所を支えてきた社員として、将来有望の俳優陣を育ててきた。が、キサラの人気はずば抜けていた。

 そして御影は単純に、ひとつのシナリオが浮かんだ。

 若き女優に嫉妬しての自作自演ではないか、と。この推理にはむりがある。証拠がないし、真野は爆弾を作ることができそうにもない。しかし頭脳としての働きがある。手駒として紙永を見つけて助言し、手製の爆弾を作らせる。あとは現在の状況にまで発展させる。すべて紙永が、もしくはその一味が真野の指示に従って行動をとっている。
 このあとのシナリオがどう運ぶか。犯人の頭にはその原稿があるはず。

 御影はその原稿を読み解こうというのだ。

「ちなみにきょうはこれからどうしますか?」御影は勘繰るように言った。

 真野が答えた。スケジュール管理をしているのはマネージャーの仕事だ。
「きょうは、夕方からテレビ局で生中継でゲスト出演します。ドラマの番組宣伝がありますから」

「何時ですか?」小柴が言った。

「16時過ぎなので、もうそろそろ出ます」真野は丁寧に言った。マネージャーらしい口調だ。的確でしっかりと女優のタイムテーブルを刻む管理能力をみせつける口調だ。

「わかりました。場所は?」御影は詰め寄る。

「赤坂です」

 

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