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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season12-8

   

 丸美出版はかつて新事業を提案した。その発案者が丸美社長だった。
“巨大な図書モールだ”。

 そして提携する会社が2社あがった。株式会社飛駒商事は飲食店を経営。株式会社YUJIN建設は施設の設計を依頼する。

 3人の曲者社長は丸美出版の企画がなければ対面することはないだろう。これで一大変革プロジェクト。株価もかなり影響を与えることになる。が、この事実を事前に知り得たことで株を購入。これがインサイダー取引違反に当たる。

 これをしたのが紙永だということになる。証券取引等監視委員会の調査は確かなものだった。言い逃れはできない。証拠もあるというのだ。

 紙永は身に覚えはないとこれを否定するも、動かしようのない証拠の数々に、途方に暮れるばかりだった。紙永の携帯電話で購入の履歴がある。
 儲けも口座にしっかりと振り込まれている。

 事情聴取で紙永は否定するも、刑事はこれを覆そうとはしない。マスコミという表沙汰にはならなかった。が、内通者がいた。

 マスコミの者は内通者と口論になり、結局これはインターネット上の掲載でとどまった。

 そのリークした人物もまた誰なのか、インサイダー取引をした犯人が誰か、人の思惑が交錯する感情が、口を閉ざす。そして押し黙る口を開くときがきた。

 

 株式会社丸美出版(まるびしゅっぱん)、丸美 晴和(まるび はるかず 40歳)社長は、イケメンでダンディーな敏腕社長であると評判だった。書籍離れの現代でもその敏腕ぶりで事業も右肩上がりだった。

 そして新事業のために、重役会議である提案を発表した。

「巨大な規模の、図書と飲食ができて停泊も可能な本屋を作る」

 二十四時間見放題の図書だが、入場料は遊園地ほど。飲食店はさまざま入れる。そこでは本好きがいつどこでも読めるという読書離れを取り込むための一大事業となると丸美社長は明言した。

 そして提携する会社が、株式会社飛駒商事は飲食店の多店舗経営、すでに多店舗事情計画に同意している。飛駒 常磁(ひこま じょうじ 45歳)、強面の和服の似合う社長。
 株式会社YUJIN建設、図書ビルもしくはモールのような施設を設計してもらう。紀見田 友人(きみだ ゆうじん 47歳)、すらりとしたニヒルな社長。笑わない。クールな印象だ。

 三人が三人とも曲者ぞろい。ビジネス提携を目的でなければ三人が対面することなどなかったかもしれない。
 将来的にはモールを超える事業プランを思案し、実行へとむかう方針となった。

 これで株価にもかなり影響を与える。この事実を知り得た人物が紙永だとのちに疑惑をかけられる。

 資本業務提携することが決定した株式会社飛駒商事と株式会社YUJIN建設が同時に丸美社長を含めて、同場所で記者会見を発表する予定だ。
 午後2時にニュースで放送することになるが、その瞬間、放送前に知り得た株式会社飛駒商事の株を不正に購入した。
 これが露見する。

 丸美出版はその不正に株を購入した人物が紙永 颯だという。

 証券取引等監視委員会の調査を受け、社長に事実関係を調査することを命じた。内部調査で取材中にも関わらず株を携帯電話のサイトを通じて買い注文を出していた。

 紙永は購入した覚えはない。その日は自分の個人の携帯電話は身につけていなかった。どこに置いたかわからないままだったが、仕事用の携帯電話があるため、個人の携帯電話のことは後回しにした。きっと自宅に置いてきてしまったのだろうと思っていたからだ。
 しかし、たしかに資本業務提携することが決定した両社が同時に同場所での記者会見で発表する午後2時のニュース前に紙永の携帯電話で株式会社飛駒商事の株が購入されていた。

 それはたしかな事実だった。

 取調べに対して「約50万円の儲けがあった」と、委員会の職員は紙永に説明している。

「覚えはない」と断固拒否する。

「だが、あなたの口座には振り込まれている」

 プリントのには紙永の口座記録が記されている。

 紙永は自分の目を疑った。まちがいなく入金されている。「株なんてやったこともないし、やりかただってしらない…、僕ではない!」必死の訴えもこれだけの証拠がある以上、訴えは払いのけられた。

 丸美出版のコンプライアンスの防衛ラインが緩いのではないか、と指摘するも対策は今後見直し二度とないよう努めることを約束する。と丸美社長は謝罪した。

 紙永は罪を犯したが、この事件は表沙汰にならなかった。そのまえに紙永を解雇することで丸美出版社の名に傷をつけたが、社長が修復したのだ。

 証券取引等監視委員会は警察沙汰にすることはなかった。マスコミにも嗅ぎつかれるまえに紙永を解雇したことで外部に漏れることもなかった。

 しかし内通者がいた。誰もが口を閉ざすことだが、出版社に勤めている者としてこれはスクープだった。だから他社にリークした人物がいる。

 しかし、そのネタはスクープとまではいかない。若輩者でインサイダー取引をしたとしてもたかだか50万円ほどでは取り上げられるほどのことでもない。新聞の隅っこに小さく掲載される程度だ。といって突っぱねた。

 事実を闇に葬り去るつもりか、と指摘されると記者魂が燃え上がったのか、その事実をインターネット上で掲載しておく。それ以上のことはできない。いいか、と確認した。

 リーク者は同意した。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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