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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<24> 〜えんぴつキャップラジオ〜

   2016年7月1日  

タイトル モモヨ文具店 開店中<24> ~えんぴつキャップラジオ~
シリーズ モモヨ文具店 開店中
カテゴリ 一般文芸
ジャンル ハートフル
あらすじ
えんぴつキャップって懐かしい人、いるんじゃない? えんぴつの芯を保護するためにはめて使うアレね。今はカラフルな物や可愛い物も出てるわ。でも、ふつうのクリアカラーのキャップを12袋も買い求めるお客さんもいるの。なにか理由があるのかしらねえ。
『えんぴつキャップラジオ』へいらっしゃい!

 

 
 モモヨ文具店では毎日、ラジオを流している。有線を導入するほど流行り曲を聞きたいのではないから、たいていがローカルの番組だった。
「おっ。そろそろね……!」
 モモヨさんは棚の上に置いてあるラジオのヴォリュームを大きくした。
 午後一時。
 ナラさんのラジオ番組が始まる時間だった。

 先週。
「えんぴつキャップの種類増やそうか」
 直くんが伝票をチェックしていると、モモヨさんが椅子をぎっこぎっこと揺らしながらとつぜん言った。
「ふつーのしかないし」
 直くんの目が真一文字のフラットになった。
 モモヨさん、この頃、タカアキさんと上手くいっていないのだ。昨日も別居婚だとか、いやだ! 別に住むもんか! と電話口で喧嘩していた。そのため、気を紛らわせるために商売に精を出しているのだ。
「そうですねえ……」
 直くんが、半ば同意すると「でっしょー!」とモモヨさんはさも良い案だというように頷いた。
「いまどきさぁ、クリアカラーのピンク、青、緑、黄色しかないのってよくないと思うのよ」
 商売上と続けたが、それ以外にも多少はある。なんたって裏手が小学校なのだからありませんでした、ではすまないのだ。モモヨさんはいろいろ不都合な部分には完全に目を瞑っていた。
「でもモモヨさん、今、需要そんなに……」
「なに?」
 直くんがおそるおそる申し出ると、その一言で片付けられた。「あ、いえ……なんでもないです」と直くんは肩を縮めた。
 そんな直くん、最近は男の格好しかしてない。実は、とあることで女装がバレたのだが、それは今回には関係ないのでまたあとで。
「いいんじゃないですか、えんぴつキャップ。小学生たちも喜びますよ」
「だよねー。ちょっと注文するわ」
 やけになった直くんもモモヨさんも、あははは! と大声で笑うとモモヨさんは雑貨の発注に、直くんは伝票のチェックに戻った。
 雑貨のカタログを開いて、ぺたぺたと恐ろしい数の付箋を貼っていくモモヨさんを横目に見ていた直くんが電話のディスプレイが黄色く光ったのを見て、これ幸いと飛びついた。それほどモモヨさんのドカ注文はあまりに酷かった。「はい、モモヨ文具店です」
 たとえファックスでもこのまま時の流れをやり過ごせれば良し、と思いながら応対すると『ああ……モモヨ文具店さん』ともさーっとしたトロい熊みたいな声が電話口から響いて直くんは相づちを打ち始めた。

 

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