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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season12-11

   

御影は目を覚ました。全身が揺さぶられるような振動がつたわってきた。

 小柴も背後で椅子にロープで捕まっている。御影も同様だったことを思いだす。すぐにこのロープを切って自由になる必要がある。

 十徳ナイフで苦労しながらも脱出した。小柴もいつのまにか意識をとりもどしていた。自由になったふたり。
 御影は小柴に状況を把握してもらうため、一番の脅威に視線を向けるように示す。
 巨大な爆弾が設置されていることに気づいた。

 小柴は早々に逃げたい、と御影に訴えるが、ここで逃げたらこの廃ビル一帯が崩壊するほどの威力があり被害は想像できないものだった。

 雲田、氷室からメールが小柴に届く。事態が悪化していることがわかった。

 御影はここで逃げたらさらなる大惨事になる。ふたりは爆弾を解除する決意を固めた。

 そして難問にぶち当たる。青、黄、赤のどの導火線を切ればいいか御影は悩む。

 氷室が助言をし黄色だというが、御影の手が動かなくなった。

 そしてタイムリミットを過ぎた。ふたりの命はいったい…。

 

 御影は目を覚ました。紙永に後頭部を殴打され気絶されたときの衝撃とはちがい、全身につたわる振動で目を覚ました。

 第二、第三の爆発が起きたのだ。それぞれの会社の社長を狙った爆発だ。

「なんだこの振動は…」御影はまだなにが起きたかはわからないが、椅子にロープで捕縛されていることを思い出した。

 周囲を見渡し停止していた記憶を加速させた。背後にうな垂れて気を失っている小柴がいることに気づいた。

「小柴さん起きてますか?」御影は背中合わせで背もたれの椅子を揺すって返事を待った。

 応答はない。

「スタンガンだったな。けっこうな刺激を…、しかたない」御影は手荒いが椅子を揺すって起こそうと試みた。

 椅子がガタガタッと静寂な廃ビルで響くだけだった。救いを求めるひとがいない。ちらっと傍らに目をむければ、絶望感に浸る物がある。

 御影はただただ願うばかりだった。小柴の目覚めに。それがかなわないのなら、いまできることをする。

「このロープから脱出しないと…」

 体を揺することにした。小柴の目覚めと椅子からロープが緩むことの一石二鳥の思案を思いつく。

「あっ、そうだ…」御影は思い出した。ロープの結び目は椅子の背もたれの後ろ側に括られている。手を縛られているわけではないから、体をよじりながら上着の裏のポケットの中には十徳ナイフがあり、それを取り出せればロープが切れる。

 体の肉、筋肉、骨を歪ませるようなイメージでロープの拘束をずらし、隙間をぬってついにポケットに手を忍ばせることができた。 解放へ向けて十徳ナイフを握りしめた。

 本来、ナイフの刃を片手で開くことはできないが、氷室探偵事務所の雲田が思案した十徳ナイフは片手でもボタンを押せば刃が飛び出すように細工が施されていた。

「よし、これで自由だ」御影はロープを切った。「ふー、楽になった」

「そう、なら、私も自由にして」小柴が目覚めていた。

「え、いつから?」御影は驚いた。

「ついさっきよ。ひとりで悪戦苦闘させてごめんなさい。でも、ロープ切るのに苦労したくないし、なんかちょっと疲れてるし、あーなんかシャワー浴びて、ベッドで眠りたいわね。三日くらい…」

「小柴さんでも冗談いうなんて余裕ってことですよ」

「だれが冗談いってんのよ、はやく切りなさい」小柴は言った。

 御影は小柴のロープを切った。

「それで犯人は?」小柴は気づいていない。

「そんなことより、これ…」御影が親指を立てて視線をむけるよう言った。

「えっ、なによ」小柴は視線を誘導した。「これはなによ!」

「爆弾」御影は軽快に答えた。

「なんでこんなでかいのがあるのよ!」

 小柴のいうとおりだった。おそらくこの廃ビルを粉砕するだけの爆弾だろう。

「液体爆弾、こんなものまで用意しているなんてね」御影は言った。

「なによそれ…」小柴は蒼白な顔になった。

「二種類の液体を使った爆弾です。この液体が混合することで爆発する仕組みですよ。この場所まで液体で持ち込むことで周囲の視線を堂々と気にせず運び込める。まったく大都会赤坂までこんな装置を忍ばせるなんて、廃ビルだからってできた芸当ではない。まさにテロリストになろうとしているな紙永は…。おおかたなんかの映画でも見て真似て勉強したんでしょうね」

「なんの映画よバカバカしい!」小柴は声を荒げた。

「死ぬほどつらい映画でしょ。とにかくタイムリミットはあと8分しかない。止めなきゃ…」

「はっ、できるわけないでしょ、こんなややこしい物、やめときなさいよ。逃げないと…」小柴はそういったが御影は爆弾とにらみあっていた。

「ここでこれが爆発したら赤坂テレビ局にいるキサラさんや多くの一般人が巻き込まれる。どのみちいまから逃げても爆発は止まらない。キサラさんを奪うためにやっているとしても…、紙永の犯行は成し遂げられてしまう。やつの目を見たときそう確信しました。あれはもはや犯罪者の目です」

 御影は頭上で殴られるとき一瞬だが紙永の目を見た。その目は善良の心を欠いた者の目。悪に染まりすべてを信じられなくなった者の目だ。

 小柴は口を閉ざした。気持ちを落ち着かせた。冷静になればもう逃げれる状況ではない。警察を呼ぶにしても間に合わない。そこまで計算して紙永はこの場所に設置したのかもしれない。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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