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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season12-12 END

   

 液体が混じり爆発するまでにあと3分の猶予がある。

 御影は助かったことで、崩れた気持ちを立て直し惨めな自分を奮い立たせた。

 今度こそ切る。御影は心底探偵である。恩師の氷室が黄色を切れと命じられても、そこには理屈や思考があり、そして推理の答えがある。このプロセスがあってはじめて動作にできる。

 御影は氷室と答え合わせの推理を話す。

 そしてたがいの推理が合致したことで、御影に勇気と覚悟が燃え滾る。

 小柴が見守るなか、御影はハサミで黄色の導火線を切った。

 氷室は犯人の紙永が赤坂テレビ局内に潜んでいる可能性があると推理し、警官隊を向かわせ捜索させた。

 すると見事に爆弾をとりつけようとしているところを確保できた。

 そして、とっくに廃ビルの爆弾が爆発してもいいころだったが、うんともすんともしない。

 それは御影が爆弾を解除したことを知った紙永は愕然となる。これでもう二度と黄更と再会することができないと悟った。

 償いの背教者、ついにクライマックス。

「第十二シリーズ完結」

 

 液体が混じり合うまでに3分。新たに表示された。

「まだタイムリミットの限界突破、あと3分の猶予…」小柴は目を見開いて助かっていることに驚いていた。

「…」御影も言葉を失っていた。「こういう仕掛けか、液体が混じりあうまでに時間がかかるんだ、ある意味猶予を与えられた気分だ…、脅かしやがって」御影は自分自身にイラついていた。

 御影は微笑んだ。気持ちに余裕ができた。一度は死を受け入れたのだから。
 これだけ惨めな気分になったことはなかった。心を揺さぶられ、恩師の言葉、助言を信じずに手が止まり、打ち震えるだけのみっともないまま人生に終止符を打つところだった。

 探偵ならいざというときこそ覚悟を決めるべきだ。このままじゃ、恥ずかしくて探偵の称号を与えられても胸を張れるはずもない。

 御影は氷室のいまいちど助言を求める。いや、核心を得る推理を確認する。

「氷室さん、すみません…、もういちど助言をお願いします」御影の顔つきが脅えから真剣な顔つきにひきしまった。

「それでいい、御影くん…、だが切るのは黄色だ。それはかわらない」氷室は同じ問いに同じ答えで返した。

 御影も覚悟を決めたことでひとつ思い出したことがあった。

 答えは同じだ。御影の躊躇は信ぴょう性というか裏づけがほしかった。

 探偵が推理するには頭ごなしに信じるだけではダメだということだ。証拠があって追い込んで真相を明るみにする。

 御影はそれが癖になっており、氷室の言葉ですら素直に聞き入れるだけの余裕がなかった。

 いまその気持ちは確かなものになった。

 氷室と同じ答えになった。爆弾の包装紙にヒントがある。爆弾を止めるヒント、導火線の黄色を切ること。

 信号機の色を表している爆弾の起爆装置。カラーは赤青はどちらも同じ意味になってしまう。

 赤はストップ、つまりが終了。ゲームオーバー。

 青は突き進め、つまりがとまらない。タイムリミットを超えること。

 どちらの選択も、過ちで爆発へとつながる。

「そうだな…、そうなる」氷室は言った。

「犯人は常にヒントを送っていた」御影は言った。

 氷室は同意した。「そのとおりだ…」

“注意せよ”。御影と氷室は同時に声にだして言った。

 御影はつづけて言った。「青、黄、赤のカラーの小包みの箱はあらかじめ犯人からのシグナルといったところかな。だから“注意せよ”、踏みとどまれ、さすれば身の危険はない、それが黄色だということだ」

「そういうことだな。でも…」氷室は言いかけたが、御影が被せて言った。

「氷室さんもうひとつ意味がある。紙永はだれにたいしてつたえようとしていたか」

「ああ、そうだな、それは愛すべきひとだ」氷室もどうやらわかっている。

「どういうこと?」小柴はたどり着いていない。

「キサラさんのことだ。本名は、黄更、黄色を指している。つまり解除の導火線は黄色ということだ。キサラさんには最大のヒントを与えていたんだ」

 御影は微笑んだ。そして黄色の導火線をハサミで切った。かなりの勇気と覚悟がいる。真相がわかったとしても、それがトラップだとしたらここで大爆発が起きている。

 黄更の黄色を切ったら爆発する。縁を切る、ことは許さないと紙永が思っていたら、御影たちは爆死している。

 しかし、御影と小柴は黄色の導火線を切っても生きている。呼吸をしている。爆弾のタイムリミットは停止している。液体は混じったことで危険な状態である。これはもしかしたら爆発する可能性もある。ここら一帯を警戒区域にして爆弾処理班にあとは任せる。

「任務完了」御影はつぶやいた。

「ご苦労さん、よくやったな御影くん」携帯電話口で氷室は御影に称賛を述べた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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