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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈四十七〉

   2016年7月6日  

それは眇寨君。あなたの為よ

 

 
 意識が朦朧としている。
 昨日まで僕は何をしていたのだろう。
 口に付けられた呼吸器。
 一定のリズムを刻む心電図。
 そして、動かない体。
 
 僕は親友の焦響《しょうきょう》にサバイバルナイフで刺された。
 刃渡り三○センチほどの刃は俺の神経を切断してしまったようだ。
 首から下がピクリとも動かない。
 しかしどうしたのだろう。頭にもやがかかっているような、不思議な感覚だ。それに身体中に包帯が巻かれている。傷口はもう塞がっていたし、今更包帯を巻く意味なんてあるのだろうか。
 そう思っていると、全身がじわじわと熱くなってきた。と同時に焼けるような痛みが、潜水艦が浮上するように、ゆっくりと湧き上がってきた。
「うわぁー!」
 僕はその激痛に耐えられず、大声をあげて飛び起きた。
 額から脂汗が流れ、それが目に入った。しみる目を右手でこすり、もう一度声をあげた。
「平山さーん! 熱いです! 痛いです! 助けて……」
 勢いよく扉が開き、白衣を着た二人の男が入ってきた。
 背の低い、襟足だけを伸ばした金髪の中年。
 もう一人はひょろひょろのメガネをかけた男。
 僕はそのメガネの男の顔を見た途端、痛みが和らいだ気がした。
 二人は急いで新しい点滴に差し替えた。そして中年の男がこう呟いた。
「よかったわ。無事成功したみたいね」
 ん? 何のことだ?
 徐々に痛みが和らいでゆくのを感じながら、少し冷静になった僕は、ある異変に気がついた。
「眇寨! よかった! 本当によかった」
 僕は今ベットの上で座っている。どうしてだ? 体を動かすことなんてできないはず。そうか、さっきの痛みで飛び起きたんだ。それに汗が目に入った時に右手で目をこすった。そうか、治ったんだ。
 心の奥底からじわじわと歓喜の念がこみ上げてきた時、全身の力が抜けてベッドに倒れこんだ。
「これを使うには特殊な脳波が必要なの。だから訓練とリハビリが必要よ」
「そうか、だがこれで眇寨はまた自由に動き回れるってわけだよな?」
「そうね。でも想像以上に難しい訓練になると思うわ。本当に使いこなせるのかしら?」
 一体、何を言っているんだ? それに平山の隣にいる男は誰なんだ? 見た目はどう見てもおっさんだが、口調は女だ。もしかしてこの人は……
「平山さん。このオカマの人は誰なんですか?」
「あら! 初対面なのに失礼な子ね! アタシはオカマじゃなくて、ホモなのよ!」
 自信満々に自分がホモだと言ったこのおっさんを少し尊敬しようかと思った。
「眇寨、こいつは松原といってな。抗エリミネートマシンを一緒に造った仲間だ」

 

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