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ウパーディセーサ〈四十八〉

   2016年7月8日  

鏡、ありがとう。お陰で目が覚めたよ。鏡を残して死ぬわけにはいかないよ。鏡を悲しませたくないからね。それこそ罪を重ねることになってしまう。勝つしかないんだ。みんなで力を合わせて、俺たちならきっとできるはずだ。

 

 
「俺の為?」
「そう。この Project E はそもそも国家権力による陰謀でも何でもないの。ある人物一人の為の殺戮計画だったの。マハーパリニルヴァーナはあなた以外のすべての人を消そうとしている。それもあなたの心に傷をつけながらね。まずは周りからじわじわと攻めていく。両親、妹、親友、恋人。まぁ、幸い恋人は無事なようね。この大男のおかげで……でも安心はできないわ。狙われていることに変わりはないんだから。当然、ここの職員もみんなマークされている。でもこの基地にいる限りエリミネート電波での攻撃は不可能。それでウパーディセーサを支援している財閥を狙った。しかしそれも不発に終わった。そこから敵は順番を変えた。あなたに精神的ダメージを与えることを優先したの。あなたの親友である川尻君の手によって傷つけられる。それはあなたにとって物凄く大きなダメージになるわけなの。そして必然的にあなたは川尻君に会いに行こうとするはず。そのときにあのマンションは恰好の舞台になるってわけ。あなたに恐怖と謎を埋め込む。しかし、敵はあなたの能力を過小評価していた。すぐれた危機回避能力と分析能力によって、限りなく真実に近い仮説を立てた。そして川尻君を誘い出す罠を貼り、殺害した。敵もかなり驚いていたわよ」
 そうだったのか。標的が僕だとは分かっていたが、まさか僕以外のすべての人を殺害する計画だったなんて。
 発電所で働く人がいなければ電気は使えない。
 浄水場で働く人がいなければ水も飲めない。
 農作業する人がいなければ野菜が食べられない。
 僕独りの世界では、僕は孤独に死んでゆくしか道はない。
 これはきっと復讐だ。僕は何者かの恨みを買っている。
 いつ? どこで? 僕は何をした?
 いや、思い当たる節は一つしかない。
「松原さん、マハーパリニルヴァーナの総帥の名前は知ってますか?」
「それがすっごい珍しい名前なの。漢字一文字で〝水〟って書くんだけど、なんて読むかわかる?」
「かつみょう」
「えっ? どうして分かったの?」
 やはりそうか。昔の記憶が閃光の如く蘇った。

「眇寨君、ここで問題です。漢字一文字で〝水〟って書いてなんて読むでしょう?」
「えぇ? 〝すい〟でしょ?」
「正解! でももう一つ読み方があるの。なんでしょう?」
「難しいよ、三月ちゃん。なんて読むの?」
「〝かつみょう〟でしたー」
「それって、三月ちゃんの名字だよね! 漢字一文字なんだ! かっこいい」
「へへー」

 

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