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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<26> ~モモヨさんと決闘~

   2016年7月15日  

わたしにだって我慢できないことはある。
たとえば、女であることを何気なく傷つけられたりすること。
それがその土地の何気ない会話や、風習や、習慣であっても、わたしは嫌。
松野沢に暮らすタカとそのことについて揉めることになるんだけれど――

『モモヨさんと決闘』じっくり読んでみて

 

遡ること数ヶ月前。
直くんが出奔していた頃の話。
モモヨさんが銀の結婚指輪をはめるに至った経緯について。

直くんが戻ってこないといっても、毎日は過ぎていく。
発注、すすき野への直くんの代理出席、接客と毎日忙しい日を送っていた。
そんななか、タカアキさんからモモヨさんに一本の連絡があった。
『モモ、明日、行けるか』
電話口の言葉はほどんど断定で、モモヨさんの意見など訊いてもいなかった。やけに切羽詰まったタカアキさんは珍しく、モモヨさんも緊張した。すーっと息を吐き、モモヨさんは「大丈夫」とだけ言った。
タカアキさんが暮らす松野沢のお歴々に挨拶に行くのだ。
もともとタカアキさん、話はモモヨさんにも松野沢のじじばばにも通してある。それが明日ということだった。
『明日、朝イチで迎えに行く。待っててくれ』
ということは、七時か八時頃だろう。
明日は休業の黒板を出さなければ……と考えていたモモヨさんに、タカアキさんは『あのさ』と言いづらそうに呟いた。
『悪いな、なんか。こんなことに付き合わせて。親に会いに行くわけでもないのに』
「ううん。お父ちゃんが月世野来る前に、お世話になってることもあるから、それ含めて挨拶してこよう! 一回やればいいんだしさ! そしたら」
そしたら、婚姻届を出すことになる――。
抽斗にしまってある婚姻届は日付未記入のまま、ずっと持っている。
モモヨさんはなんとなく、婚姻届を見るにつれて不安が募ってくるのを感じていた。
(このまま、何事もなく結婚までこぎ着けたとして、それで、わたしたちはどうなるんだろう……?)
決心も決意もしたつもりだったのに、今更ながら浮つきよりも空恐ろしさがくる。今までそれなりに一人でやってきたことが、今度は〝夫と二人〟というくくりになる。
モモヨさんにとってほんの少し窮屈さを感じる部分だった。

 

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