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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈五十一〉

   2016年7月19日  

我々、ウパーディセーサーは屈しない! すべての迷える人たちの寄りかかるべき存在として、これからも一団となってこの世界を守ってゆくのだ!

 

僕は平山と宮守を呼んだ。
システムルームに集まった二人に、松原の解析結果を伝えた。
二人ともさほど驚きはしなかったが、固く腕を組んで目配せをし合っていた。
「眇寨。このことはお前から鏡に伝えろ」
「えっ! そんな! 敦さん!」
「鏡にとって最も信用している人間は誰だ?」
「……わ、わかりません」
「それはお前に決まっているだろう」
情の籠った、あたたかい言い方だった。
「ウパーディセーサのリーダーは敦さんじゃないですか」
「その通りだ。だがな、こういう重要なことを伝えるのは俺じゃないほうがいい。鏡が最も愛し、信頼している男から伝えられたほうが、その、なんだ。強がらずに済むだろう? 鏡は俺たちにあまり感情を出さない。我慢しているんだ。だから、俺たちはこれ以上我慢をして欲しくない。お前の広い心で受け止めてやってほしい。わかるな?」
「そう……なんですよね。鏡は強がりで、意地っ張りで、皆んなのまとめ役で。でも本当は傷つきやすくて、涙もろくて、乙女で。一見、鋼のように強堅な鎧をまとった人に見えるけど、本当に身にまとっているのは黄金のような柔らかくて煌びやかなドレスなんです……わかりました。俺、伝えてきます」
そう言って、システムルームから客間に出ると、職員たちが心配そうな眼差しで俺を嘱目している。その中でひときわ心細げに僕を注視している鏡の姿があった。
「鏡、ちょっと俺の部屋に来てくれないか?」
ニッコリと微笑んで鏡に言った。
鏡の顔は蒼ざめていたが、僕は優しく背中をさすりながら部屋へと連れて行った。

「なぁ、鏡。もう薄々わかっていると思うけど、鏡と三月は双子の姉妹だってことがわかったよ」
鏡はベッドに腰掛け、カーペットに絡まった僕の髪の毛を見つめている。
「鏡は、もしかして、自分の父親が水《かつみょう》だったってことに落ち込んでいるの?」
「……そう……かもしれない」
「でもね、鏡には素敵なお母さんがいるじゃないか。いつも鏡のことだけを考えてくれていた……」
「違うの! お母さんは……私を憎んでいたんだわ! だから私に暴力ばかり……」
「躁鬱病、だったんだよね? 躁鬱、つまり双極性障害になる人って、責任感が強くて、良心的で、ユーモアがある人がなりやすいんだって。俺なりに調べた結果だけどね。鏡のお母さんはかつみょうと離別して一人で鏡を育て上げようと決意した。だから死に物狂いで働いて、できる限りの愛を鏡に注いだ。でもね、やっぱり離婚がショックだったんだと思うよ。鏡を育てるという責任感の中、心のどこかに虚無感があったんだと思う。それが交互に自分を襲ってくる。女手一つで育てるためにはやっぱり毎日働かなくてはいけない。その責任感と虚無感と疲労感とが反発しあって、発病したんだと思う」
「…………」
「だから、鏡のお母さんは鏡のことが嫌いで暴力を振るったのではなくて、鏡を一人前に育てるために、病気になったんだよ。それに、悪いことばかりじゃないと思うんだ。こんなこと言ったら、三月に怒られるかもしれないけど。鏡が水の娘だったからこそ、俺たちは巡り会えたんじゃないかな?」
「へっ?」

 

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