幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season13-4

   

御影は美容院で天然パーマにさせられた。もとにもどるか心配するが、いまは任務遂行を考えること。と言われればまだいいのだが、質問に返答しやしない。

サウジアラビア大使館には日本人もいるが、やや御影のような若い者はいない。肌質や振る舞いが若輩者だとバレる可能性がある。
そこでプチ整形を提案する川上、大地だった。それは毅然とした態度で乗り越えるしかない。が、本人との対面を御影は希望した。

取り調べ中の薪と対面させてもらえるかは、さすがに政木警部でも規律に違反してしまいそうだが、森谷は氷室探偵事務所のメンバー、協力を惜しまないのではと自信に満ちていた。

翌日の早朝から薪との対面を約束した。大地はこなかった。御影は昨日仕上がった天然パーマの扱いに慣れておらず苦戦した朝を迎えていた。

政木警部は御影たちを寝起きの顔でジャージ姿で迎えた。警視庁の仮眠室で一夜を明かしたという。

伯田警部補が一行を連れていく。そして扉を開いた。そこには薪が、御影そっくりな姿で待っていた。
誰の目も驚愕していた。こうして対面した姿を見ると驚くほどそっくりなのがわかる。

薪と御影はいさかいとなる。互いに狙いがあって探りを入れる。薪は警察がなにをしようとしているか察した。自分に成り代わって大使館に潜入する。
御影がミスすればやつらに殺されるかもしれない、と口を滑らす。

対面したことで御影はしっくりと成りすますことができると感じた。

そして月曜の朝まで修練は続く。

 

大使館にはサウジアラビア人も多くいる。杉山のような、いや御影のようなひ弱そうな日本人がいればいやでも目立つ。ほかにも日本人はいるが肌が白く170センチ、58キロ。痩せ形の筋肉質。さらっとしたヘヤー…、いやここがちがっている。天然パーマ。これは美容院で天然パーマにしてもらうとして、ちょっとしたことで偽物だとバレる可能性は十分にある。

「いったいなんでこんなことに…」

御影は天然パーマを当てられていた。さらさらのヘヤーだったというのに、まさか癖毛にさせられるとは思ってもみなかった。想定外な髪形にされることはどこか屈辱的になる。単なるバツゲームにひとしい。

「任務遂行後には、完全に直るんでしょうね?」御影は森谷、川上、大地と美容院の女性を鏡越しで見つめた。にらみながら。だが、だれもその問いに関して視線をあせて返答しようとしないのだ。

「こ、こいつら…」御影は身動きできない状態で、怒りを鎮めることに費やした。「きっといいことあるよな」

川上がとんでもないことをいいだした。「そうだ、御影。若々しさを保つために、プチ整形をするってのはどうだろうか。年齢不詳としてごまかすことが狙いだ」

大地はなぜか川上の提案に拍手していた。もはや単なるいたずらっ子の物言いだろう。

「却下です。ひつようない」御影は切り返した。

「いや、でもさぁー」川上は言った。鏡の中の御影と目があった。

「却っ下…」御影は鏡越しから川上と目があったが、目でにらみころした。

こんな恥ずかしいことは二度とごめんだ、と御影は思った。任務でも却下!

だが、22歳の御影にはいまの外見、肌質は28歳としている杉山とは似て反している。若さが隠そうとしてもにじみ出ている。その辺でバレる可能性がある。

川上と大地はそこを指摘しているのだ。

「ふたりを並べて相違してそうなところをなんとかごまかす思案をたてないとまずいんだよ」川上は言った。

大地はうなずいていた。どうやらさっきから川上側に立っていたのは危機回避能力が発動していたからだろう。これはサイコロふるより、靴を飛ばすより、なにより当たる危機回避だということがわかった。

「そういうことか…」御影は少し考えた。

川上も森谷も大地も、じっと御影を見据えていた。が、ただただ時間が過ぎるだけで結論らしきなにかが見つかるとは思えない。

「いいアイデアはあるか?」川上が何気なく沈黙の空気を断ち切ろうと言葉を投げる。

「ええ」意外と御影の反応はよかった。「というより本人と対面した方がいいかも…」

「なに?」川上は驚いた。

「なるほど、それは名案。たしかに比べてどこがおかしいか、モノホンとくらべたら一目瞭然。これほどのモノマネはない。そっくりさんご登場、という番組もあったのだよ」森谷はこの手のバラエティー番組が観賞しているのがわかった。

「でも警察がなんていうか、いくら警視庁の政木警部が取り仕切っていても、それはむりなんじゃ…」川上はあきらめていた。

「そうだな。でもやってみなければわからない。協力は仰いでもらえるかもしれない。わたしたちは氷室名探偵がいる氷室探偵事務所のメンバーなのだよ。政木警部の上層部でもうなずくしかないと思うがな」森谷は自信に満ちたように微笑んだ。

「そうか、ならやってみっか」川上は乗る気になった。

大地もうなずいた。協力はするようだ。

「サンキュー、みんな…」御影は共感を得た。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


コメントを残す

おすすめ作品