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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season13-6

   

政木警部たちと森谷たちはそれぞれの車で大使館付近に潜伏して待機している。音声は三者間で通信が可能となっている。

館内見取り図を写メを撮り、すぐに伯田警部補が持っているパソコンのメールに添付して送信。
これで指示がもっと誘導されやすくサポートが迅速に対応できる。

杉山は個室のオフィスを構えている。それぞれが個室を与えられている。これなら他者の視線を気にせず情報収集に躍起になれる。この待遇のなかスパイ活動をしていたというわけだ。

御影は事前に政木警部が薪から聞き出していたパソコンのID・パスワードを入力してパソコン内に証拠がないか探す。
そこに日本人の職員が入ってきた。すぐに入館証の名前に視点をおき端末から人物のデータを引き出した。誰でも閲覧可能の職員の名簿が見れる。これはナイスな機能だった。
この職員の男は無関係の知人というのがわかった。愛想よく受け答えし男は出ていった。

御影は唐突にあるひらめきが浮かんだ。それは薪が酔っぱらって逮捕されるという間抜けなことだ。杉山のデスクからメモがみつかった。そこには取引をしたと思われる内容が書きなぐってあった。そこには名前らしき文字が。

そして新たな訪問者がノックをする。サウジアラビアの女性だった。サラ モハメド。杉山の親密な相手だと口調から、態度からわかった。

御影はやはりこういう相手が館内にいたか、とうろたえる。だが毅然に振る舞う。

御影の心は動揺していた。

 

左耳の後ろ髪の毛に隠すように取り付けた通信機。髪をなでるように触るようにしてトトンと指先でたたいて了解の返答をした。

「緊張するな、サウジのひとたちもけっこういる」御影の視線が泳いでいた。

音声通信が耳にとどいた。「ぶつぶついわなくていいわよ」政木警部だった。大使館のそとで黒塗りの自動車に乗っているだろう。伯田警部補と黒川刑事が同乗している。

森谷と川上と大地がべつのところで同じく探偵社の乗用車で待機している。無線、通信機は三者間で通話可能になっている。

「御影くん、挙動不審な態度だけはとらないこと。毅然と悠然と歩くこと。目をそらしてもならないけど、目を見開いて相手を見てもダメ」

「えっ?」御影はすでに通りすがりのひとと目が合ったが、俺はここの職員だ、という堂々たる顔で目を見開き会釈する。「だから相手が一瞬ひるんだわけだ」

大使館の見取り図が館内の壁に設置されていた。それを目視する。職員がそんな見取り図をみているのは不自然と思われるため、人目を忍んでスマートフォンのカメラ機能で撮影した。

「これで見取り図は手に入った。そちらにも送る」御影は手早く伯田警部補が持っているパソコン端末にメールに添付して送った。

「二階の日本人職員がいる個室のデスクね。これは人目を阻めてちょうどいいわ」政木警部がいった。

「杉山という男はけっこうな立場のようだ」伯田が答えた。「偽っているが28歳という年齢で個室待遇とはな。役職はないもののどういう経緯でこうなったのか」

「ほかの職員はそうじゃないんですか?」黒川がもっともな質問をした。

「ああ、たしかにほかの日本人職員も個室だ。そういうものなのか」伯田は御影が送った見取り図を見て答えた。

「だから好き勝手にスパイまがいなことをしていたというわけね。知識や伝手があれば可能ってわけだ。悪意が心の潜む者が他国に被害をもたらす結果になることの判断ができない者が交流してはだめね」政木警部は杉山という薪を否定した。

「だいだい身分を偽っているのにどうしてこの職につけたんだ?」伯田の疑問にだれも答えられなかった。

「やべっ」御影の声がきこえた。

「どうした?」伯田が政木警部にきくまえにたずねていた。

「きょうの俺の仕事、てんこ盛りの山盛りだ。てか、なんかよくわからない仕事ばっかりだ。どうすれば?」パソコンを立ち上げた。ID、パスワードを入力する。これは事前に薪から聞き出していた。政木警部の手厚い事情聴取のおかげだ。

「仕事のことはどうでもいい。ログインしてとくにかわりはないのね? なら仕事のファイルよりもスパイとしての活動のファイルや証拠がないか探りなさい」

政木警部の緩やかに張のある重厚な声に、御影は怖気づいてしまうほどだった。

「あ、あ、はい、わかってます」マウスをにぎり、アイコンを手あたりしだいクリックしていった。

もうとっくに8時半を回っていた。これといってだれかが呼びにくることもない。朝礼や周知、回覧やメールなど扉をノックする者もいない。

「この大使館での仕事ってひとり作業がほとんどなのか?」御影は好奇心が沸いていた。

「しらん、いいから集中しろ」川上の声だった。

「川上さん、いたの」御影は安全だと思い舌が軽くなっていた。

「いるわい、てか余裕ぶっこいてると手痛い事態になるかもよ。だいたいそういうもんだってドラマや映画ではな」川上のほくそ笑むからかいが聴こえた。

御影はパソコンの画面に集中してファイルをのぞきこんだ。

「無視かよ!」川上の声はもはや御影にはとどいていない。

カチッ、クリックするマウスの音だけが車内にいる者たちに聞こえるだけとなった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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