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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season13-7

   

親密な相手であるサラというサウジアラビア人の女性にバレずにすんだ。やはり森谷の指導のおかげもあり似ていたのだろう。御影は安堵のなか調査をつづける。

昼の時間になり、大使館内にある食堂へ冒険だ。ひと目につくかもしれないが、多くの人間が入れ替わりするのであれば印象には残らない。
知人の男やサラと遭遇するかもしれないが、言い訳をつけて食堂を離れればいいこと。

おすすめを知りたがる政木警部に、警部補と刑事が批判の目で見ていた。そこに森谷までのってきた。御影はひとりで緊迫した環境の中、こういう脱線した話題はストレスになる。

オフィスにもどるさい、背後から視線を感じた御影。振り返ってもそのような人物はいない。だが、御影の直観力はプライベート・アイからくるもの。まちがない。

杉山という男、大使館内で監視されているのか。懸念は疑念となりさらなる深みへと足元は危険な領域に踏み込んでいる。

政木警部は判断に迷うが、御影はきょう一日で見つけると公言した。あとは御影に任せるのみだった。

そして、ついにその証拠たるものを御影は発見した。スパイ映画さながらの室内での細工が鍵を握っていた。

ネット回線のないiPad端末で発見された証拠の品からファイルを開く。

御影の目は見開いた。それは予想を超えるもので取引をしようとしていたのだ。

 

朝のあいさつをすませて立ち去るサラにドギマギと緊迫していた御影だったが、潜入してものの30分でバレたら苦労が徒労に終わる。それだけはさすがに嫌な仕事でもさまにならない。

「ダサいよな、ここまできたらやっぱり完遂したい」御影はみずから鼓舞した。

「その意気だ。御影くん」森谷の声をひさびさにきいた気がする。

「森谷さん、俺いまのところ順調ですよね?」御影は微笑んだ。

「もちろんだ。でも長居は無用。きょう一日でつかみたいところだが、どうだ?」

御影の足音が聞こえる。サラが言ったとおりここは杉山の個室のオフィス。広さは10畳ほどだ。入口から右側の壁には本棚がびっしりとある。窓側に背をむけて入口を正面にしてデスクが真ん中にある。そのやや入口側に近いところにテーブルとソファが二組ある。入口から左側はトイレと流しがある。これには御影は驚いた。

「風呂なしの住居になるな」

深夜まで探索できるかもしれない。見つからないときはその手段を考えておこう。

「それはむりかも」イヤホンから政木警部の声がした。

「どうしてですか?」

「残業はそもそもなし。18時過ぎには完全にひとは退館しなければならない。御影くんも茗荷谷駅の杉山の自宅に帰宅すること。いいわね?」

「わ、わかりましたよ。ちょっと冒険できるぜっこうの機会だったのに…」思ってもみないチャンス。大使館の肝試しができるところだったのに。

証拠をあげるため、デスク回り、パソコン内のアイコン、ファイル、その他を調べている。

ただただ時間が過ぎていく。山盛りの仕事を放置することに決めている御影。もはや手をつけることはできない。

「さっぱり意味がわからない」と投げ出した。まるで夏休みの宿題を8月31日の最後にやることにしていたが、けっきょくやらずに二学期初日忘れたと言い訳するように放置だ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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