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更年期パラダイス【5】

   

突然の腹痛に襲われたコユリ。医師からは更年期障害と告げられた。
それまで、自分の身体の不調を気にしていなかったコユリだったが、思い当たる節はいくつかあったのだった。
そんなコユリを、孝三が訪ねてきて──

恋愛には目もくれず、ひたすらに駆け抜けた女性実業家の心と体を描く、大人の物語・第5話。

 

 コユリは、その日は結局会社を休み、午後遅い時間に駅の近くの本屋まで出向くと、更年期障害についての本を買い、喫茶店でゆっくりと読んだ。
 確かに、いろんな症状が書いてあった。
 コユリが今まで感じていた不快な症状も、更年期障害の影響があったのかもしれなかった。
 そして、コユリは本の中の一節に目を止めた。
『更年期と性生活』
 コユリはその部分を読み進めるうちに、なんだかとても心当たりを感じてしまった。
 コユリはここ一年ほどで、なんだか性欲が無くなったと、しみじみ感じていたのだ。
 これが男だったら、きっとインポテンツというわかりやすい形で出ていたのだと思うのだけれど、コユリは女なので、そのことに気が着くのが遅かったのだ。
(イヤだわ。男に興味が無くなった、と思っていたけど、違っていたんだわ。わたしの女が、もう終ってしまったということだったんだ)
 そう気がつくと、コユリはちょっと愕然とした。
(仕事ばかりしているうちに、わたしの、女としての人生は、いつの間にやら終っていたんだ。こんなことなら、もっともっと、遊んでおけばよかった。夫もいなかったのだし)
 しかし、そんなことはとうに後の祭りなのだった。
 コユリはぼんやりと窓の外を眺めた。
 もう、更年期も、どうでもよくなっていて、病院に通うのも億劫だなと思った。

 社長業を和彦に譲り、和彦がきちんと仕事をこなしている様子を見るにつけ、コユリは安心しながらも、コユリの人生を尽くした会社が、もうコユリを必要としていないことをしみじみと感じるようになった。
 毎日出社する必要もなくなり、家で過ごすようになると、なんだかいろんなことが手につかないような気になり、せっかく始めた新しいマンション探しも面倒になった。
 コユリは、家政婦さんの作った夕食を、一人で食べながら、ただ寝そべってテレビを見ているだけの、自堕落な夜を度々過ごすようになっていった。
 そして、師走が過ぎ行きようとしていた。

 

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