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更年期パラダイス【7】

   

シュウから「田舎へ帰る」と聞かされたコユリ。その夜、二人はシュウのマンションで激しく乱れた。
孝三が退社することを告げると、シュウはコユリと孝三を自分の田舎に招待するのだった。
実業家としての日々を終えたコユリ。田舎へ帰ることになったシュウ。妻を亡くし定年退職した孝三。
それぞれに新しい日々を歩むことになった三人の、不思議な人間模様──

恋愛には目もくれず、ひたすらに駆け抜けた女性実業家の心と体を描く、大人の物語・最終話。

 

 この日の、乃木坂のマンションでのシュウは凄かった。もう、有無を言わせず、という感じであった。
 正直、更年期障害のことも頭にあるコユリにとっては、セックスはあっても無くても良いもの、くらいに成り下がってしまっていたのだけれど、シュウの手で丹念に体のあちこちを弄くられると、それなりに潤ってくるのがわかって自分でも驚いたくらいだった。
 圧巻だったのは、コユリの乳房に吸い付きながらの腰の動き。さすがのコユリも、我を忘れて声を上げつづけてしまった。

「あー、コユリさん、すごく良かったです」
 果てた後も、コユリをしっかりと抱きしめながらシュウが言う。コユリも、満たされて幸せな気持ちになった。
「僕は・・・。コユリさんと離れてしまうのだけが寂しい。まだ何もお返ししていないのに」
「何を言うの、シュウちゃん。別に何も、返してもらわなくちゃならないものなんかないわ。わたしはシュウちゃんのおかげで、長い間とても安定していられたから」
「あの店を開く時に貸していただいたお金だけでも、返そうと思っているんですけれど」
「いらないわ。あれはあげたものだって、言ったでしょう」
「でも・・・。じゃあ、僕はどうすればいいんだろうな」
 シュウは何事か、考えていた。
「寂しくなるわ、わたしも」
 シュウに釣られて、コユリもついつい本音を言ってしまった。
「三月には、和彦が結婚して、孝三さんも退社してしまって。それに、シュウまでいなくなっちゃうだなんて。わたし、寂しい・・・」
 やっぱり更年期障害のせいだろうか。昔は中々他人には漏らさなかった本音が、コユリの口からほとばしるように出てくるのだった。
「え、孝三さん、退社なさるんですか」
 わたしは以前、シュウの店に孝三を何度か連れてきたことがあるので、シュウは孝三を知っているのだ。
「ええ、そうなの。引き止めたんだけど」
「そうなんですか・・・」
「奥さん、最近亡くなったのよ、孝三さん。ガンでね」
「そうなんですか。奥さん、まだ若かったんでしょうにね」
「そうよね・・・」
 そう言いながら、コユリは、もしかしてわたしにとっても他人事ではないのではないかとふと思う。五十歳を過ぎた頃から、その思いは強くなった。
 わたしも大きな病気にかかってしまえば、長くないのかもしれない・・・。
 かといって、もしかして人生は、あと三十年も続くのかもしれず、コユリは頭が混乱してしまう。
 更年期になり、女としての人生は一旦終わりを告げようとしているのに、さらに人生は三十年も残っているのかもしれないという、けして終末が幸せとは思えないような予感。

 

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