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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season13-11

   

 森谷たちは相談をしていた。御影の態度をめぐって探偵と刑事たちのあいだで険悪なムードになっていた。

 そのとき政木警部に御影から着信があった。しかし、その相手は御影ではなかった。

 通話が切れたあと政木警部は、御影がサウジの男とサラに誘拐されてしまったことを話す。電話の相手はサウジの男だった。要求はUSBメモリーだ。核兵器の設計図が入っている。

 思案を練る。サウジの男の思惑どおりにならない算段。それを川上が勝算ありの顔で微笑んだ。

 そのころ、御影は杉山でないことがバレた。眠らされ荷物を荒らされ免許証を見つけられた。御影の名前だった。スマートフォンの履歴から政木警部のこともしられてしまった。

 そしてアルの素性もまた徐々に明るみになる。しかし追い込まれているのは自分たちの方だった。

 サラは杉山がニセモノだとわかってから御影を誘拐し、USBメモリーを警察と取引するところまで悪事を重ねて、どこか精神がおかしくなりはじめていた。

 ずっと眠らされていた御影。いや眠っていたふりをして身動きをしない。御影はうな垂れる態勢のまま、まぶたが開いていた。

 

 政木警部は頭をかきながら思案を練る。「森谷さん、どうしたらいい?」

「こちらも予想外なのだよ。二日目で、ここまで浸透してしまった御影くんの成りきりの精神が杉山に取り込まれてしまうとは…、失敗なのだよ」森谷は皺の多い顔で困惑していた。

「警部」伯田警部補がいった。「突入しますか?」

「むりよ。入口でとめられる。それにどうやっていうのよ」

「でも、今夜取引があることは御影探偵もしっているのでは?」黒川刑事がいった。

 だれもが黙った。

「それはそうだが、そのあいだになにもないとはいえない」川上が黒川刑事の意見に異を唱えた。

 11時を回っていた。結論がでないまま時間はどんどん過ぎていく。

「これはまいったわね」政木警部は頭を垂れていた。

「ひとりの探偵がある意味これは暴走だね」伯田警部補はいった。

「それはこちらも同じ。そもそも成りすますなんてことがまちがいだ。警察が潜入させたんだぞ」川上がにらみつけた。

 険悪なムードの中、ジャズの音楽がさらに濁していく。

 政木警部の携帯電話に御影の名前で着信があった。

「どうしてたのよ!」政木は応答ボタンを押してすぐに声を荒げた。

 だが、すぐに相手が御影でないことに気づいた政木警部。無言で出た電話口の相手を刑事の直観で感じとった。

「え、ええ…、ええ、ええ…」ただ応じるだけの警部だった。

 見守るように座しているメンバーは警部を見つめるだけだった。相手がだれでどんな会話をしているのか想像できなかった。

 警部は最後に「彼の安否は無事なのね?」といって通話は切れた。

 そこで周囲の者は蒼白した。

 政木警部はひと息吐いて説明した。「あの例のサウジの男と、親密な女サラは共犯者。御影くんをさらった。そしてUSBメモリーと交換を要求してきた。日時はきょうこれから東京国際コンテナターミナル付近の小さな倉庫で…」

「それは罠では?」伯田警部補がいった。

「そうね」政木警部は認めた。「その可能性はある」

「なら、救出する方法はひとつです」黒川刑事が提案する。「警視庁や警察署の協力を得て周囲を包囲して一網打尽にする。御影探偵に手も出せないように、優位はこちらにあるとみせつけるんですよ!」

 だれも賛同しなかった。

「警部さん」森谷がいった。「黒川刑事の提案は可能ですか? おそらくあなたひとりでこいといってませんか?」

 黒川刑事は、はっ、と思い起こした。

「そのとおりです」政木警部は、森谷の勘が正しいことにうなずいた。「それと警官隊に配備させるのには時間がかかる。きょうこれからこいといっていた。いますぐってこと。おそらくむこうは待っているのだろうけど時間がない。USBメモリーはコピーしたのをわたしは持っている。上層部もこういうことを察していたのかもしれない」

「やはり」森谷は納得していた。

「だからって素直にそんな条件でいっても、むこうはどうするかわからない。政木警部と御影探偵がUSBメモリーを渡してしまったらあとはどうなるかわからない」黒川警部はだんだん声がちいさくなった。

「ありがとう」政木警部は部下が心配してくれていることに感謝した。

「だが、やり方しだいで救出は可能。犯人も拘束はできるかもしれない」川上が黙っていたが思考をめぐらせていた。

「それはどんな?」伯田警部補がきいた。

 川上はニヤリと微笑んだ。それは勝算のある救出劇だということだ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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