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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season13-13

   

 御影は間一髪で脱出できた。川上の勝算の救出劇は未完のままだった。

 アルが銃を持っていたことで川上の算段は崩れた。だが手渡したUSBメモリーの中身はニセモノだった。御影も自力で脱出して、万事OKと川上は納得していた。

 御影は杉山の成り切りが解除されたことで、みんなに迷惑をかけた。それを謝罪し、アルの目的を話した。

 杉山こと薪の途方もない預金をせしめることだった。

 政木警部は信じられないひと言を告げた。敗北の二文字をだ。御影は見当もつかなかった。まだ目の前の倉庫には犯人がいる。警官隊もきたところで逮捕は確実。その予測もつかないわけではない。

 だが負けを認めた。

 警官隊は倉庫を包囲し、アルを捕縛した。無意味な逮捕だが、政木警部は警官たちを労った。
 アルの釈放は目に見えているからだ。

 だが、そこで手錠されたアルを、御影が呼びとめた。

 逮捕されたアルが小型船で取引相手の船にむかっていた。テロリスト相手と取引する。USBメモリーもほしがっている相手だ。

 そこに御影たちも強襲部隊も隠れてその時を待つ。

 最大の緊迫状態が幕を開ける。

 

「助かった…」御影は危機一髪脱出に成功した。

「あれ、脱出できたの?」川上が申し訳なさそうにいった。

「え、どういう意味?」御影は息切れをしていた。

「川上探偵が救出劇の勝算があるっていうから」政木警部は頭を抱えていた。「USBメモリーもニセモノ。中身はエロ画像にしたのよ、このひと」

 川上を指していた。

「中身を調べるひまはないから、おそらく手渡しはできない。近寄らせないようすると思った。これは当たった。中身も調べられないから政木警部と御影は逃げてもらって、背後から伯田警部補と黒川刑事がサウジの男を取り押さえる。もちろん警官隊の応援は呼んだが、まさか銃を所持しているとは思わなかった。そのせいでおれが考えた作戦はパーだ」川上は笑っていた。

「笑いごとかよ、あとちょっとで撃たれていた。サウジ男が銃に慣れてなくて助かった…」御影は安堵についた。

「ほっほっほっほっほっ、御影くんはどうやら、もとどおりにもどったようだ。杉山か薪に乗っ取られようとしていたよ。今朝は」森谷がいった。

「そうでした。すみません。自分でもよくわからない。あそこまで変貌するとは信じられなかった」御影はうな垂れていた。

「そのせいでみんなが危ない目にあうとこだった」大地は静かに指摘した。

「わかってます」御影は顔が強張った。

「とりあえず、あのふたりは逮捕ね。もちろんなにも得ていないサウジの男は残念ね」政木警部は微笑んだ。

「でも、サラは杉山の途方もない預金を引き出す暗証番号をしっているようです。外国の銀行に預けているって、アルはいってました」御影は、まだほかのメンバーがしらない情報を話す。

「そう、それが狙いだったのね。その犯行がこれってわけだ」政木警部は合点がいった。

「待てよ」川上がいった。「ということはこのたたかいは」

 御影はまだなにを言いだすのか、見当もつかない。

「ええ、わたしたちの完全敗北ね」政木警部が口にした。まだ倉庫の中には犯人がいる。すぐ目の前に。

 そこに遅れて警官隊が来た。とりあえず倉庫は完全包囲された。

「彼らを捕まえても、すぐに釈放になる」これも政木警部がいった。

 それについてはだれも疑念を抱かない様子だった。御影だけはいまだ見当もつかない。「なんで?」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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