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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第1話 王子と王女 (1)

   2016年8月16日  

 
「……殿下、姫様」
「……ジンクか。どうした」

 聞き慣れた声に、私は目を開き、身を起こした。そして、私達に向かって静かに礼をする少年を見上げた。
 彼は最近十四歳になったばかりの年若い子だ。だが、その切れ長の瞳は鋭く、頭も冴える。常に私達の傍に控える従者なのだ。

「お立ち下さい。もうじき、こちらにアース様が参られます」
「! 叔父様が…?」

 一体何故? 普段はこの城には近づきもしないのに、わざわざ足を運ばれるなんて。

「――――そうか、叔父様が」

 ルイスはそう呟くと、私を落ち着かせるようにして、肩を抱いた。すると、それを見たジンクが私の後ろで座ったままのルイスに視線を向け、再び頭を下げた。

「恐れながら殿下。ご存知の通り、アース様はお厳しい。久方ぶりにお会いするのですから、それなりのご挨拶をしなければなりません」
「その通りだ」
「! ア、アース様」
「お前は下がっていろ、ジンク」
「……はい、アース様」

 心配そうに私達を見つめながら、ジンクは言われるがまま、庭から離れた。
 庭の先にある門が開き、そこから、ぞろぞろと従者を引き連れた男が現れる。長い黒髪を束ねたその姿は、まるで戦地にでも赴いているかのようだ。だが、その細身の体と顔立ちが、その声の厳しさを薄めていた。

 彼は、アース・カーネット。この国の王族であり、私達の叔父にあたる男だ。
 私はルイスに引き寄せられたままだった体を離し、立ち上がろうとしたけれど、彼に強く腕を掴まれていて、それは出来なかった。

「久しいですね、王子殿下、姫様」
「――――ええ、そうですね叔父様」

 こちらに向かい、歩みを向ける叔父様に対し、ルイスは座ったまま返事をした。その様子に、叔父様は眉を寄せ、ルイスを睨んだ。

 

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